安政の改革

安政の改革

安政の改革（あんせいのかいかく）は、1853年にアメリカのマシュー・ペリーが日本を訪れたことを契機に、江戸幕府が実施した一連の幕政改革及び雄藩による藩政改革を指します。この改革は、歴史学者の田中彰によれば、主に西南雄藩（薩長土肥）の動きに大きく関連し、各藩の権限を強化しました。特に、幕政改革は老中首座・阿部正弘によって進められたものであり、幕府の改革の一環として位置付けられています。

幕政改革の背景

幕政改革の背景には、江戸時代後期における幕府の財政危機がありました。第11代将軍・徳川家斉は多くの子供たちを養子にしたり、娘の婚儀に多額の費用をかけたりするなど、浪費が続いていました。このような状況は、武士階級の貴族化も引き起こし、幕府財政は「瀕死の病人」と化してしまったのです。さらに、家斉が亡くなると、第12代将軍・徳川家慶の下で老中首座に就任した水野忠邦が改革に取り組むも、上知令による改革は不評を買い、失敗に終わります。

その後、阿部正弘が老中首座に就任し、ペリー来航の事態を前にして改革の必要性を痛感し、積極的な施策を打ち出すことになります。彼は弘化年間から、外国船の脅威に対抗するための防備強化や、幕府の権力を増すための施策を次々と実施しました。

ペリー来航前の改革

阿部はペリー来航の前から、防衛体制を整えるために様々な施策を講じていました。例えば、江戸を守るために品川や浦賀に砲台を設置し、諸藩に対しては軍事訓練を許可しました。また、嘉永4年（1851年）には株仲間の再興を命じ、法令による恩赦も制度化しました。薩摩藩の内部問題に介入し、新たな開明派の藩主を立てるなど政治への関与も見られました。

安政の改革

安政改革は、嘉永6年6月のペリー来航の際に本格化しました。阿部は国家の重要な問題として、親藩、譜代大名、外様大名を問い、広く意見を収集することに努めました。その後、将軍家慶が亡くなり、徳川家定が就任すると、阿部はそのまま幕政の責任者となり、改革を進めます。嘉永7年には再びペリーが来航して日米和親条約が締結され、これを機に海防の強化を命じ、大型船の建造解禁や教育機関の設立を実施しました。

改革の過程で、阿部は多くの人材を登用し、外交や軍事に関する機関の設立を進めました。しかし、安政2年には自身の老中首座の地位を他に譲ることになりますが、改革は継続されました。阿部は将軍継嗣問題に対して、一橋家の徳川慶喜を支持し、次第に新しい政治の流れが生まれます。彼の死後、幕政は引き続き不安定を極め、堀田正睦や井伊直弼の指導により改革は後退していきました。

幕府の変遷と影響

安政の改革で最も重要なことは、阿部正弘が従来の慣習にとらわれず、人材の能力に基づいた登用を行ったことです。この施策によって、阿部が登用した人材は後の明治時代においても重要な役割を果たすことになります。しかし、将軍家の継嗣問題や幕府内の権力争いにより、改革は必ずしもスムーズには運ばず、最終的には幕府の混乱を増幅させる結果となりました。赤字続きの幕府の権力は弱体化し、安政の改革によって一時的に幕府の条件を整えたものの、根本的な解決には至らず、その後の政局に大きな影響を及ぼしました。

こうした改革の動きは、後の藩政改革に影響を与え、多くの雄藩は中央政局における影響力を増していくこととなります。歴史的に見て、安政の改革は幕末の動乱を前にした重要な転換点であったといえるでしょう。

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