安東郷氏

安東郷氏（あんどう さとうじ）

生涯

安東郷氏は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、美濃国北方（現在の岐阜県本巣市北方町周辺）の領主である伊賀定重の四男として生まれました。兄に安東守就がいます。郷氏は、天文14年（1545年）に山内一豊の姉である通を妻に迎えました。

当初は美濃の土岐氏、次いで斎藤氏に仕えていましたが、織田信長が美濃を平定すると、信長の家臣となりました。元亀元年（1570年）には姉川の戦いで兄と共に戦い、翌年には伊勢長島の一向一揆勢との戦いで深手を負いながらも奮戦しました。しかし、天正8年（1580年）、兄の守就と共に信長の勘気を被り、美濃武儀郡に幽閉されることになります。最初は親族である稲葉良通が彼らを支援していましたが、信長の怒りが収まらず、次第に支援が困難となり、安東氏の家臣の多くが浪人する事態となりました。

天正10年（1582年）の本能寺の変で信長が亡くなると、郷氏は兄らと共謀し、稲葉良通が領有していた旧領の北方城を奪還し、再起を試みました。しかし、同年6月8日に稲葉氏の攻撃を受け、兄と共に討ち死にしました。

郷氏の嫡男である山内可氏は、後に山内一豊を頼り、土佐藩の家老である伊賀家の祖となりました。

系譜

曾祖父：伊賀光就（太郎左衛門）
祖父：伊賀定就（伊賀守・出羽守・輝郷）
祖母：梶原氏
父：伊賀定重（伊賀守・出羽守・時郷）
母：稲葉一鉄の伯母
兄：安東守就（伊賀守・定次・友郷・守就）
甥（長男）：安東郷良（平左衛門尉）
郷良の子：安東忠四郎
甥（二男）：安東郷利（小右衛門・右衛門佐）
甥（三男）：安東郷春（勘左衛門）
甥（四男）：安東守吉（太左衛門）
甥（六男）：安東定郷（二郎左衛門）- 長井隼人の養子となる
甥（七男）：安東賢郷（半十郎・蒲生将監）
甥（八男）：安東郷純（三右衛門）
甥（九男）：安東郷忠（源次）- 土佐藩（宿毛与力）
姪（長女）：木下勘解由室
姪（二女）：竹中重治（半兵衛）正室
姪（三女）：遠藤慶隆（但馬守）正室
兄：安東頼郷（出市）湖叔宗栄？
兄：安東郷重（十蔵）湖叔宗栄？
本人：安東郷氏（太郎左衛門）
妻：山内盛豊の娘（山内一豊の姉）
嫡男：山内可氏（左衛門佐）- 土佐藩家老（宿毛領主）
二男：安東次左衛門
三男：安東参次 - 毛利元隆の養子となる
長女：深尾重良（和泉）室
二女：乾和信（山内彦作）室 - 山内一豊の養女となり、乾和信に嫁ぐ
三女：広瀬之為（惣兵衛）室
四女：毛利源吾室
姉：金森長近（五郎八）室
姉：西尾豊後守室
姉：島木金兵衛室
妹：淀藩家老改田伝右衛門尉室

補注

安東郷氏の生涯は、戦国時代の動乱期における武将の典型的な例と言えるでしょう。彼は、織田信長の家臣として活躍し、一時は栄光を掴みましたが、信長の怒りを買い、失脚を経験しました。しかし、本能寺の変を機に再起を図るなど、波乱に満ちた生涯を送りました。また、子孫が土佐藩に仕え、その後の歴史に名を残したことも特筆すべき点です。

出典

『新撰美濃志』
『宿毛市史』
『伊賀氏先世略記』岩村通俊著
『法雲院君山内氏伝』岩村通俊著
『高知県人名事典』高知市民図書館、1971年
* 『土佐藩家老物語』松岡司著、高知新聞社、2001年

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