遠藤慶隆

遠藤慶隆：戦国を駆け抜けた美濃の武将

遠藤慶隆（えんどう よしたか）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将で、美濃国（現在の岐阜県）の有力国人であり、郡上八幡城主、そして美濃八幡藩初代藩主として知られています。その生涯は、戦国時代の激動と、その後の江戸時代への移行期を色濃く反映しています。

生い立ちと美濃斎藤氏家臣時代

遠藤慶隆は、美濃の国人・遠藤盛数の長男として生まれました。遠藤氏は、もとは千葉氏の一族である東氏の庶流でしたが、父・盛数が宗家当主の東常慶を倒し、八幡城主となりました。盛数は美濃の戦国大名である斎藤氏に恭順し、斎藤義龍、斎藤龍興の下で尾張国の織田信長と戦いましたが、永禄5年（1562年）に亡くなります。当時13歳だった慶隆は家督を継ぎ、老臣たちは盛数の未亡人（慶隆の母）を斎藤氏の重臣・長井道利と再婚させ、道利が慶隆の後見人となりました。その後、慶隆は同じく斎藤氏重臣である安藤守就の娘を妻としています。

織田信長家臣としての転換

永禄7年（1564年）には、竹中重治が稲葉山城を奪取したことで、慶隆は一時避難を余儀なくされます。その隙に、従兄弟の遠藤胤俊が八幡城を奪い、慶隆兄弟の暗殺を企てましたが、慶隆は家臣に救出され難を逃れました。翌年には長井道利の援軍を得て、胤俊を退け、八幡城主に復帰しています。永禄10年（1567年）に斎藤氏が滅亡すると、慶隆は織田信長に属し、郡上郡内の本領を安堵されました。

織田家臣となった後も、慶隆は幾多の戦いに参加しています。元亀元年（1570年）の姉川の戦いでは、織田軍の一員として浅井・朝倉軍と戦い、信長から感状を受けました。しかし、その後の志賀の陣では、多くの兵を失い、京都の大徳寺まで逃れることとなります。その後、信長の元に帰還し、比叡山焼き討ちにも従軍しました。

また、遠藤氏は信長に仕えながらも、石山本願寺や武田信玄とも通じていたとされています。これは、郡上の統治には寺社勢力の協力が不可欠であったことや、信玄の西上作戦における重要なルートを確保する必要があったことなどが背景にあります。しかし、武田信玄の死後、信長の疑念を買い、降伏を余儀なくされました。

天正3年（1575年）の長篠の戦いでは、弟の慶胤を派遣し武田軍と戦い、その後の越前一向一揆討伐にも参加しました。本能寺の変で信長が亡くなった後も、しばらくは織田信孝に従いましたが、やがて羽柴秀吉の傘下に入りました。

豊臣秀吉家臣としての活躍

秀吉の家臣となった慶隆は、天正12年（1584年）の小牧・長久手の戦い、紀州攻め、四国征伐、九州征伐などに従軍しました。しかし、立花山の戦いの後、秀吉に反抗したとして領地を没収され、減封されています。その後、小田原征伐や文禄の役にも従軍しましたが、文禄の役では弟の胤基が病死するという悲劇に見舞われました。

関ヶ原の戦いと郡上藩立藩

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、当初、岐阜城主の織田秀信から西軍への参加を誘われたものの、徳川家康の東軍に加担しました。八幡城を奪還しようとしましたが、旧領主稲葉貞通が東軍に寝返ったため、激戦の末に一旦敗走するも、最終的に和睦。関ヶ原の戦いの本戦にも参加し、東軍勝利に貢献しました。戦後、慶隆は旧領の郡上八幡に復帰し、2万7000石の領主として郡上藩を立藩しました。

郡上藩主として

郡上藩主となった慶隆は、郡上城の改修や銀山の開発を行い、藩政の安定に努めました。また、大坂の陣にも参加し、その戦功により徳川家康から黄金を賜っています。晩年は出家し、旦斎と号しました。

遠藤慶隆は、戦国時代から江戸時代初期という激動の時代を生き抜いた武将であり、その生涯は、武将としての活躍だけでなく、文化的な側面でも地域に貢献しました。郡上八幡で有名な「郡上おどり」は、慶隆が士農工商の融和を図るため、盆祭りの夜に踊りを奨励したのが始まりと伝えられています。その歴史的意義から、現在では国の重要無形民俗文化財に指定されています。

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