安楽寺城

安楽寺城について

安楽寺城（あんらくじじょう）は、富山県小矢部市の安楽寺集落にあった日本の城跡です。この城は、全体を通して砦に近い規模を持ち、主郭は南北50メートル、東西40メートルの大きさを誇ります。土塁や空堀は見られますが、全面に整備されたものではなく、平坦な地形はほとんど存在しません。

構造と築城の背景

安楽寺城は、戦国時代の前期に築かれたと考えられています。歴史的資料『源平盛衰記』によると、倶利伽羅峠の戦いの際、3000騎の軍勢がこの城を起点に金峯坂を通り、北黒坂へと向かったとされています。また、同時期の『平家物語』には、この地域の地勢に詳しい巴御前の指揮のもと、彼女の軍勢が安楽寺を越えて弥勒山へと進撃した様子が記されています。

安楽寺からは「北黒坂道」という道が延びており、これは倶利伽羅から安楽寺を経て今石動へと続く重要な経路です。さらに、西側には加賀国九折へ、北西方面には加賀国莇谷を通り鳥越城への道が存在し、安楽寺は交通の要所としての役割を果たしていたと推測されています。これらの交通路を抑えるために、この城が築かれたのではないかと考えられています。

おもな出来事と歴史

安楽寺城には、戦国時代に数名の土豪が拠点を置いていた歴史があります。天文年間（1532年-1554年）には、高橋与十郎則秋という土豪がこの城に拠っていたとされますが、彼は木舟城主の石黒左近将監による攻撃を受け、野寺村で討死しました。安楽寺城から野寺村まではおおよそ2キロメートル南東の距離に位置しています。また、石黒氏の拠点であった木舟城へは東方に位置しており、この地域は一向一揆の勢力と石黒氏との争いがあったとされています。

この城の虎口は西側に開かれており、攻め込まれた場合には加賀方面への逃避が難しかったと予想されています。そのため、高橋与十郎則秋がどのように逃げようとしたのかは不明です。その後、松岡新左衛門という人物が拠り、その後には久兵衛という別の人物が城主として名を残しましたが、彼らの詳細な素性は不明です。松岡新左衛門は、越中国道坪野城の城主としても知られています。

天正年間（1573年-1591年）の後期には、佐々成政と前田利家の攻防戦がこの地域で繰り広げられた際、安楽寺城にも軍が駐留した可能性がありますが、改修の跡は見受けられませんでした。

江戸時代には、この城は放棄され、荒れ果て、獣の住みかや田畑へと転用されていたとされています。歴史的には大きな役割を果たした城でありながら、時を経て自然に還っていった形です。現在は、その痕跡をたどることができる貴重な遺跡となっています。

参考資料

• - 日本の城一覧

安楽寺城は、周囲の戦略的な位置に築かれたこと、そしてその後の歴史での影響力を持っていたことから、多くの研究者や歴史愛好家によって注目されています。

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