安永大噴火

安永大噴火

安永大噴火は、江戸時代中期の安永8年（1779年）から天明2年（1782年）にかけて発生した桜島の噴火です。噴火は南岳山頂、南岳南山腹、北岳北東山腹、そして北東沖の海底で発生しました。この噴火活動によって、8つの島が形成されましたが、その後の合体や侵食により、現在では新島を含む4つの島が残っています。火山爆発指数はVEI4とされ、150名以上の死者を出した大規模な噴火でした。

噴火の概要

安永8年9月29日（1779年11月7日）の夕方頃から、桜島周辺では有感地震が頻発し始めました。翌10月1日（11月8日）の朝には、井戸水の沸騰や海水の変色といった異変が観測されました。午前11時頃には南岳山頂火口から白煙が上がり始め、午後2時頃には南岳南側中腹から黒煙が噴き出し、その直後には桜島北東部でも噴火が始まりました。夕方には南側火口付近から火砕流が流れ出し、夕方から翌朝にかけて大量の軽石や火山灰が噴出、遠く離れた江戸や長崎でも降灰が確認されました。

10月2日（11月9日）には北岳北東山腹と南岳南側山腹から溶岩流出が始まり、翌10月3日（11月10日）には溶岩が海岸に到達しました（安永溶岩）。さらに翌年、1780年7月6日（安永9年8月6日）には桜島北東海上で海底噴火が発生し、1781年3月18日（安永10年4月11日）にもほぼ同じ場所で海底噴火とそれに伴う津波が発生し、被害が報告されました。

噴火後、鹿児島湾北部沿岸の海水面が1.5〜1.8m上昇したという記録があり、噴火に伴う地盤沈降が発生したと考えられています。一連の噴火活動による噴出物の総量は、溶岩が約1.7立方km、軽石が約0.4立方kmに及びました。降灰は主に太平洋方面に広がりましたが、偏西風の影響で紀伊半島、東海地域、関東平野、さらには宮城県の牡鹿半島にまで及んだとされています。

安永諸島

一連の海底火山活動によって、桜島北東の高免村（現在の高免町）沖合に、燃島、硫黄島、猪ノ子島など6つの火山島が形成され、「安永諸島」と名付けられました。これらの島々の中には、すぐに水没したり、隣接する島と結合したりしたものもあり、『薩藩名勝志』には8番目の島までが記録されているそうです。現在残っているのは4つの島だけで、最大の島である新島（燃島）には、1800年（寛政12年）から人が住み始めました。

被害状況

薩摩藩が幕府に報告した被害状況によると、永損高は約1万520石、当損高は約1万3,041石、死者153人、死馬285頭と報告されています。この噴火は、当時の人々に大きな影響を与えたことがわかります。

桜島の三大噴火

安永大噴火は、桜島の三大噴火の一つとして数えられています。他の二つは文明大噴火（15世紀）と大正大噴火（1914年）です。これらの噴火はいずれもVEI4の大規模なマグマ噴火でした。安永大噴火は、桜島の歴史において重要な出来事であり、その後の桜島の火山活動にも大きな影響を与えたと考えられています。

参考文献

島村英紀『完全解説 日本の火山噴火』秀和システム、2017年。ISBN 9784798050089。
山本博文『見る・読む・調べる 江戸時代年表』小学館、2007年。ISBN 9784096266069。
桜島町郷土誌編さん委員会『桜島町郷土誌』桜島町長 横山金盛、1988年。
井村隆介「史料からみた桜島火山安永噴火の推移」『火山』第43巻第5号、日本火山学会、1998年、373-383頁、doi:10.18940/kazan.43.5_373、ISSN 0453-4360、NAID 110003041143。
* 津久井雅志「史料にもとづく桜島火山1779年安永噴火の降灰分布」『火山』第56巻第2-3号、日本火山学会、2011年、89-94頁、doi:10.18940/kazan.56.2-3_89、ISSN 0453-4360、NAID 110008687463。

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