安牛駅

安牛駅：宗谷本線沿いの小さな駅の歴史

概要

北海道天塩郡幌延町字開進にあったJR北海道宗谷本線の安牛駅は、1925年7月20日に開業、2021年3月13日に廃止された、歴史の深い駅です。駅名はアイヌ語の「ヤスシ（yas-us-i）」に由来し、サケの網引き場であったことにちなみます。周辺はかつて集落を形成していましたが、近年は人口減少が進み、駅周辺には人家がなくなりました。2021年の廃止後も、駅舎は幌延町によって移設され、見学可能です。


歴史

安牛駅は、1925年、天塩南線の延伸開通によって開業しました。その後、天塩線、宗谷本線と線路名を変えながら、国鉄、JR北海道と経営主体も移り変わりました。1963年には公衆電報の取り扱いが廃止され、1977年には貨物、1984年には荷物取扱いが廃止されました。1984年には無人化、1985年には貨車駅舎に改築されるなど、時代の変化とともに駅の姿も変化を遂げてきました。

2016年のダイヤ改正で普通列車の本数が減便されましたが、全列車が停車するようになりました。しかし、利用者減少が続いたことから、JR北海道は2019年、沿線自治体に駅の存廃に関する協議を要請。幌延町は利用者の少なさ、高額な維持管理費、近接駅の存在などを理由に、2020年、駅の廃止を容認しました。そして、2021年3月、安牛駅はついにその歴史に幕を閉じました。


駅構造と周辺環境

安牛駅は地上駅で、単式ホーム1面1線の棒線駅でした。駅舎はヨ3500形車掌車を改造したもので、トイレはありましたが閉鎖されていました。かつては相対式ホーム2面2線の交換駅でしたが、利用状況の変化に伴い簡素化されました。駅舎周辺は、かつて集落があり、洋服仕立て屋や商店などが営業していましたが、廃止前には人家はなくなっていました。駅裏手は樹林、駅周辺は牧草地が広がり、天塩川沿いの沼地も見られました。安牛小学校跡地や開進神社なども周辺にありました。


利用状況

安牛駅の利用状況は、開業以来減少傾向にありました。廃止直前には、年間の乗車人員は非常に少ない数値でした。この利用状況の悪化が、廃止の決定に大きく影響を与えたと考えられます。


廃止後の駅舎

廃止後、駅舎は幌延町によって駅隣接地に移設されました。現在、見学が可能です。これは、安牛駅の歴史を後世に伝える取り組みの一環として行われたものです。


駅名の由来と地名

駅名は、その所在地である地名に由来します。地名はアイヌ語の「ヤスシ（yas-us-i）」から来ており、「網で魚をすくう場所」を意味すると言われています。字名である「開進」は、1959年の字名改正で周辺地区と再編された際に命名されたもので、「今後の開拓を促進する」という意味が込められています。


隣の駅

雄信内駅
南幌延駅


まとめ

安牛駅は、宗谷本線沿線に位置する小さな駅として、長い歴史を刻んできました。利用状況の減少、維持管理費の高騰、そして近接駅の存在などが廃止の要因となりました。しかし、駅舎は移設され、その歴史を伝える存在として残されています。安牛駅の歴史は、過疎化が進む地方における鉄道のあり方について考える上で、重要な事例と言えるでしょう。

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