安田善次郎 (2代目)

2代 安田善次郎

2代 安田善次郎（1879年3月7日 - 1936年11月23日）は、日本の実業家であり、安田保善社の総長、安田銀行の頭取、大垣共立銀行の頭取、安田生命保険の社長などを歴任しました。初代安田善次郎の長男として生まれ、幼名は善之助、号は松廼舎と称しました。

実業家としての活躍

1896年には安田銀行の頭取に就任し、その後も共済生命保険の取締役、大垣共立銀行の頭取、帝国製麻の社長などを歴任しました。1921年には保善社の総長に就任するとともに、家督を相続し、安田善次郎を襲名しました。その後も、第三銀行の頭取、共済信託の社長、安田生命保険の社長、帝国製麻の社長を務め、多岐にわたる分野でその手腕を発揮しました。

書誌学への造詣と蔵書

実業家としての活動と並行して、安田善次郎は書誌学にも深い関心を持ち、貴重な古書の収集に力を注ぎました。特に有名なのが、松廼舎文庫と安田文庫という二つの大規模な蔵書です。

松廼舎文庫

松廼舎文庫は、安田善次郎が歌舞伎への関心から、伊原青々園や三木竹二らと共に歌舞伎研究の雑誌を出版したことをきっかけに、歌舞伎に関する資料を収集したものです。収集対象は、幼児向けのものから、江戸時代の絵入り通俗読み物、戯作者の自筆本、能楽や歌舞伎の貴重な資料など、多岐にわたりました。特に、歴代の市川団十郎の自筆日記や、初代中村勘三郎以来の重代の伝書、歌舞伎の番付、役者評判記、古浄瑠璃本、世阿弥の『十六部集』、能謡の伝書、古版謡本、多数の赤本など、江戸文学研究に欠かせない資料を多く含んでいました。

これらの資料は、伊原青々園の歌舞伎・演劇史研究の基礎となりましたが、1923年の関東大震災によって全て焼失してしまいました。しかし、1919年の全国図書館大会で展示された際の展観目録が残されており、その一部を知ることができます。

安田文庫

松廼舎文庫を失った後、安田善次郎は再び古書の収集を始め、安田文庫を形成しました。松廼舎文庫が江戸文学、特に歌舞伎関係の資料に特色があったのに対し、安田文庫は古写経や古筆をはじめ、古写本、古版本、江戸時代の名家の自筆本、版本の変わり本、絵入り通俗読み物、能謡関係、赤穂義士に関する資料、江戸の絵図、江戸暦、書目類、一枚刷、古短冊など、幅広い分野の古書を収集しました。

また、他の蔵書家の旧蔵書もまとめて購入し、小津桂窓の西荘文庫の一部、三村竹清、山中共古、六合新三郎、大槻如電・文彦兄弟の大槻文庫（大半は森立之・約之の蔵書）、林若樹、市島春城、内田魯庵、巌谷小波、久保田米斎の蔵書などを一括または善本のみ買い取りました。高木文庫の最善本も譲り受け、古活字版は400種以上に達しました。大久保家などの江戸の通俗絵入り読み物も一括購入し、草双紙の分野では松廼舎文庫以上の規模になりました。

安田文庫の演劇関係の資料は後に早稲田大学演劇博物館に寄贈され、残りは平河町邸内の仮書庫に保管されていましたが、1945年3月末の東京大空襲により、疎開していた一部を除いてほとんどが焼失しました。

親族

初代安田善次郎は父。妻は酒井忠宝の二女・銑子。長男に安田一、孫に安田弘がいる。弟に安田善五郎や安田善雄、妹の暉子の孫にオノ・ヨーコがいる。従兄に安田善兵衛や安田善助がいる。

栄典

1928年（昭和3年）11月10日 - 勲三等瑞宝章を受章。

まとめ

2代安田善次郎は、実業家として成功を収める一方で、書誌学にも深い関心を寄せ、貴重な古書を収集しました。松廼舎文庫と安田文庫という二つの大規模な蔵書を形成しましたが、残念ながら関東大震災と東京大空襲によって焼失しました。しかし、その蒐集した資料は、日本の学術研究に大きな貢献をしました。

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