安藤盛季

安藤盛季：室町期の武将、蝦夷地との交易で勢力を築く

安藤盛季（生没年不詳）は、室町時代に陸奥、蝦夷地で活躍した武将です。檜山系安藤氏（後の安東氏）の初代当主として知られています。父の名は諸説あり、法季、貞季、能季、宗季などの異説が存在します。また、生母を陸奥守北畠顕家の娘とする伝承も存在します。

盛季は下国殿、下国安藤太盛季とも呼ばれていました。当時「安東」という表記は見られませんでしたが、子孫が安東を名乗ったため、後世の文書では安東盛季とも記されています。弟に鹿季がおり、子には康季と南部義政室がいます。

海の豪族としての安藤氏

安藤氏は、陸奥津軽十三湊付近を根拠地とし、蝦夷地との交易を中心とした海上交通に従事していました。盛季は、応永2年（1395年）に弟の西関二郎鹿季を出羽秋田郡に分家させ、上国家と号したと伝えられています。ただし、当時の秋田郡には既に安藤氏の一族が進出していたと推測されています。

下国と上国の二家分立は、鎌倉末期の安藤氏の乱における一族争いに起因するとする説もありますが、詳細は不明です。

南部氏との攻防、そして蝦夷地へ

秋田家系図によれば、盛季は応永21年（1414年）に没したとされていますが、松前藩史『新羅之記録』では嘉吉3年（1443年）に蝦夷地に渡ったとされており、没年については定かではありません。

嘉吉3年（1443年）以降に没したとする説では、応永30年（1423年）に足利義量に馬、輸入銭、海虎皮、昆布を献上した安藤陸奥守を盛季と同一人物と見なしています。

『満済准后日記』によれば永享4年（1432年）、『新羅之記録』によれば嘉吉3年（1443年）、南部義政に攻撃され、蝦夷地へ退転したと伝えられています。近年の学説では、永享4年（1432年）の敗戦後に幕府の仲裁により和睦が図られ、盛季は十三湊に戻り永享12年（1440年）に娘を南部義政に嫁がせました。しかし、嘉吉2年（1442年）に再度攻撃され、翌年に蝦夷地に逃れたと見られています。この説は、十三湊の発掘結果などからも支持されています。

一方で、『若州羽賀寺縁起』によれば、応永5年（1398年）に羽賀寺が焼失した際、後花園天皇からの勅命を受け、子の康季が永享8年（1436年）に再興させたという記録も残っています。落慶時の文安4年（1447年）には、盛季は既に死去していたと考えられます。

盛季の死後

盛季没後の下国安藤氏は、康季が文安2年（1445年）に津軽に攻め入るものの戦陣で病死し、その子の義季も享徳2年（1453年）に南部氏との戦闘に敗れ自害しました。これにより、盛季の直系は断絶し、盛季の甥の子である政季が下国家を継承することとなりました。

このように、安藤盛季は、室町時代という激動の時代を生き抜き、蝦夷地との交易を通じて勢力を拡大した人物であり、その後の安東氏の発展の礎を築いたと言えるでしょう。

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