十三湊

十三湊（とさみなと）とは

十三湊は、現在の青森県五所川原市十三地区、十三湖の西岸に位置し、13世紀初頭から15世紀半ばにかけて繁栄した中世の湊町です。当時は内海であった十三湖を通じて日本海と繋がっており、蝦夷沙汰職（えぞさたしき）を務めた安東氏（津軽の安藤氏）の拠点として、特に隆盛を極めました。

地名の由来

「十三」という地名の語源には諸説あります。アイヌ語の「トー・サム」（湖畔）に由来するという説や、12世紀に藤原秀衡の弟である藤原秀栄が整備した際に、秀衡が「遠長湊」（とおおさのみなと）と名付けたものが縮まったという説があります。江戸時代前期までは「とさ」と読まれていましたが、後期以降は「じゅうさん」と読まれるようになりました。現在では、「十三湊」関連の語に限って古訓の「とさみなと」と読むことが一般的です。

十三湊遺跡

十三湊の跡地は十三湊遺跡（とさみなと いせき）として知られ、2005年（平成17年）に国の史跡に指定されました。遺跡の中心地は五所川原市十三古中道に位置しています。発掘調査によって、当時の港湾施設や町屋、武家屋敷、寺院などの遺構が確認されており、中世の十三湊の様子を今に伝えています。

歴史

平安時代

天然の良港であった十三湊は、日本列島交易路の北の拠点として、10世紀後半には地域経営の拠点となる福島城が築城されました。平安時代末期には、奥州藤原氏の支配下に入り、国内や大陸との交易拠点として発展しました。藤原氏の一族である藤原秀栄が現地に土着し十三氏を名乗りますが、1229年に安東氏によって福島城を攻め滅ぼされました。

鎌倉時代

鎌倉時代後期には、安藤水軍を擁する豪族・安東氏の本拠地となり、和人と蝦夷地のアイヌとの間の重要な交易拠点として栄え始めました。安東氏は、日本海北部を中心に広範囲に活動し、十三湊はその交易の中心地として次第に隆盛を極めていきました。

室町時代

室町時代に入ると、十三湊は最盛期を迎えます。日本最古の海洋法規集である『廻船式目』には、「三津七湊」の一つとして「奥州津軽十三湊」の名が記されています。安藤水軍は関東御免船として活動し、朝鮮半島や中国との交易も行われていました。遺跡の発掘調査では、これらの交易を示す様々な遺物が出土しています。

遺跡は、東西に延びる土塁を境に、北側には安東氏や家臣たちの館、南側には町屋が整然と配置されていました。遺跡は現在、港湾施設地区、町屋・武家屋敷・領主館地区、檀林寺跡地区の3つに分けられています。南部には奥州藤原氏の藤原秀栄が建立した檀林寺があり、平泉との交流も窺えます。

しかし、室町時代中期に安東氏が南部氏に敗れて蝦夷地へ逃れると、十三湊は急速に衰退し、交易拠点としての地位を野辺地湊や大浜に奪われました。その後、飛砂の堆積によって港としての機能が低下しましたが、16世紀後半には再び整備され、復興が図られました。江戸時代には、岩木川を下ってきた米を十三湊から鯵ヶ沢湊へと運ぶ「十三小廻し」が行われ、北前船のルート上の港として、上方から蝦夷地へ向かう船の寄港地として栄えました。

怪書が語る十三湊

怪書とされる『東日流外三郡誌』には、1340年の大海嘯（大津波）によって十三湊が壊滅的な被害を受け、安東氏の政権が崩壊したという記述があります。しかし、発掘調査ではこの時期の津波の痕跡は確認されておらず、同書自体も偽書であるとされています。ただし、弘前大学の発掘調査により、十三湊を襲った津波の痕跡と思われる泥の堆積が確認されており、幾度かの津波の試練を受けながら存続していったのは確かなようです。

年表

後氷期初頭：古十三湖が形成され始める
縄文時代前期：古十三湖が最大規模となる。交易が始まる
縄文時代後期：古十三湖が縮小し始める
平安時代後期：十三湖の大きさに近付く
12世紀：奥州藤原氏による広域支配体制の確立
鎌倉時代初頭：津軽地方が鎌倉幕府の支配下に入る
13世紀初頭：安東氏のもとで十三湊が繁栄する
15世紀半ば：安東氏が南部氏に敗れ、十三湊が衰退する
* 2005年：十三湊遺跡が国の史跡に指定される

周辺地域

十三湊は、西の日本海と東の内海に挟まれた砂嘴に形成されました。現在は青森県五所川原市十三地区に属し、青森県道12号鰺ケ沢蟹田線が通る十三湖大橋南部に位置しています。水戸口（船の出入口）は、中世には明神沼南端に位置していたとされ、付近には航海の守護神である湊明神宮があります。また、山王坊遺跡や福島城跡は、安東氏との関連が指摘されています。

十三湊は、中世の日本の貿易史を語る上で重要な場所であり、その遺跡は貴重な文化遺産として保存されています。

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