安藤良整

安藤良整（安藤豊前守）

安藤良整（あんどう りょうせい）は、戦国時代から安土桃山時代にかけて後北条氏に仕えた家臣です。通称は豊前守（ぶぜんのかみ）。氏康、氏政、氏直の三代にわたり、後北条氏の家政を支えました。特に小田原城の代官として、城下町の運営や経済政策に深く関わったことで知られています。

経歴

安藤良整は、永禄年間（1558年～1570年）頃から奉行人として活動していたと考えられています。その初期の活動として確認できるのは、『所領役帳』の編纂です。この役帳は、後北条氏の家臣団の所領や役割を記録したもので、安藤良整は玉縄衆の一覧の末尾に筆者として名を連ねています（永禄2年（1559年））。

小田原城代官としては、段銭（税）の徴収や、家臣への扶持（給与）の支払い、職人衆への手当の支給など、経済面での実務を担当しました。また、寺社の建立にも関与しており、誓願寺の建立に際しては、北条氏康に寺地の下賜を願い出ています（永禄6年（1563年））。

永禄12年（1569年）から天正16年（1588年）にかけては奉者を務め、数多くの虎印判状が残されています。これは、彼が後北条氏の重要な決定に関与していたことを示しています。元亀元年（1570年）には、今川氏真が家臣に与えた知行地の売却を承認する判物において、証人として名を連ねています。

天正元年（1573年）頃には入道し、「良整」と号しました。天正6年（1578年）には、唐から黒船で三崎港に帰着した唐人の売買交渉に、北条氏政の検使として立ち会っています。文書上で確認できる最後の活動は、天正17年（1589年）の多摩川の洪水による領地争いの検使です。

軍事面では、野庭関城の城将を務めたとする説もあります。

安藤升

安藤良整は、度量衡の統一にも貢献しました。『北条五代記』によると、当時、後北条氏の領国では地域によって異なる升が使用されていましたが、安藤良整は京升より少し大きい「榛原升」を考案し、領国内の統一を図りました。この榛原升は、「安藤升」とも呼ばれていたそうです。

暦の再計算

暦の作成にも関与しました。当時、後北条氏の領内では、三島暦と大宮暦という2種類の暦が使用されており、置閏法の解釈の違いから、暦月にずれが生じるという問題がありました。天正10年（1582年）に暦のずれが顕著になった際、北条氏政は安藤良整に暦の再計算を命じました。安藤良整は私宅に籠って計算を行い、三島暦が正しいと結論付けました。これにより、後北条氏の領内では三島暦が採用されることになりました。

滅亡の予言

『北条五代記』には、安藤良整が後北条氏の滅亡を予言したという逸話も残っています。彼は、北条氏綱の追号である「春松院」という号が「三人の日をまつ」という意味を持つことから、北条家の武運は長くはないだろうと語ったとされています。実際に、彼の予言通り、3代後の氏直の代に後北条氏は滅亡しました。

人物像

『北条五代記』は、安藤良整を「関八州の代官を。一人して沙汰する。世にこえ、利根、才智にして。一つをもて、百を察し。爰を見ては。かしこをさとる。権化の者といひならはせり」と評しており、その優れた能力と洞察力を高く評価していたことがうかがえます。

安藤良整は、後北条氏の家臣として、内政、経済、文化など、多岐にわたる分野で活躍し、後北条氏の発展に大きく貢献した人物と言えるでしょう。

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