安里八幡宮

安里八幡宮について

安里八幡宮（あさとはちまんぐう）は、沖縄県那覇市安里に鎮座する神社です。琉球八社の一つであり、八社の中で唯一八幡神を祀る神社として知られています。明治の近代社格制度では無格社とされましたが、その歴史と文化的な価値は非常に高いと言えるでしょう。

祭神

安里八幡宮では、応神天皇、神功皇后、玉依姫命の三柱を祀っています。これは琉球八社の中で唯一であり、他の七社は全て熊野権現を祀っていることからも、この神社の特異性が際立ちます。

歴史

神社の創建は、15世紀の天順年間（1457年 - 1464年）に遡ると伝えられています。『琉球国由来記』には、当時の琉球国王・尚徳王が喜界島討伐の際に、戦勝祈願として八幡大菩薩を勧請したという伝承が記されています。

創建伝承

伝承によれば、尚徳王は喜界島討伐の際、出陣前に水鳥を射落とし、さらに海上で小鐘を得たといいます。王は戦勝を祈願し、「戦に利あらば霊鐘を授かり、帰国後には八幡大菩薩を崇める」と誓いました。その結果、小鐘は容易に手に入り、戦も勝利に終わったため、帰国後、矢を立てた場所に社を建て、八幡大菩薩を祀ったとされています。この伝承は、琉球王国の歴史と信仰が深く結びついていることを示唆しています。

真言宗寺院との関係

安里八幡宮は、かつて真言宗の神徳寺に併設された神社でした。琉球八社の一つとして、王府から神職の役俸や営繕費が支給されていました。祝部、内侍、宮童といった神職が置かれ、神楽の際に着用する服装も王府から支給されていました。このように、神社は王府の庇護のもと、重要な役割を担っていました。

近代以降

明治時代に入り、琉球王国が廃止され沖縄県となると、安里八幡宮は近代社格制度によって無格社とされました。経済的な理由から村社に列格することもできず、社殿の荒廃が進みました。一時は、拝殿が倒壊し、本殿も傾斜するなど、非常に厳しい状態だったようです。その後、太平洋戦争で社殿は焼失してしまいましたが、戦後、再建されました。

沖縄戦の戦場

神社が位置する高台は、沖縄戦の激戦地「シュガーローフの戦い」の戦場となりました。この場所が、歴史の変遷を見守ってきた場所であるといえるでしょう。

現在

現在の社殿は戦後に再建されたもので、地域の人々の信仰の中心として、静かにその歴史を刻んでいます。安里八幡宮は、琉球王国の歴史と、沖縄の人々の信仰を今に伝える貴重な存在です。

参考文献

袋中良定 著、明治聖徳記念学会 編『琉球神道記』明世堂書店、1943年。
伊波普猷、東恩納寛惇、横山, 重 編『琉球史料叢書 第1』井上書房〈琉球史料叢書〉、1962年。
鳥越憲三郎『琉球宗教史の研究』角川書店、1965年。
加治順人『沖縄の神社』ひるぎ社、2000年。

関連情報

* 沖縄県神社庁公式サイト 安里八幡宮

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