官稲

官稲について

官稲（かんとう）は、日本の律令制において、国が田租として徴収した稲米の中から出挙の運営に使用された部分を示します。この制度は、国の財源を形成し、広範な影響を持っていたことから、日本の古代社会における重要な要素でした。

官稲の成り立ちと構造

官稲は、田地から徴収される貴重な資源であり、出挙とは貸し出しの形式で運用されました。農民から集められた稲は、元本として用いられ、借り手は利益を伴う形で国に返済しました。この返済システムは、国の財政を支える重要な手段でありました。主な形態としては、大税、籾穀、郡稲があり、これらはそれぞれ異なる役割を果たしていました。

• - 大税（正税）: 出挙の主な財源であり、収益は国の臨時的な支出に使われるとともに、一部は中央に供出されました。
• - 籾穀: 万が一の事態に備えるために保存され、特に不動倉に蓄えられました。
• - 郡稲: 出挙のもう一つの財源で、国の通常の支出に役立てられました。

また、官稲には雑官稲という別のカテゴリも存在し、公用稲や官奴婢稲、駅起稲などがその例です。これらは特定の目的で使われました。

官稲の統合と変遷

天平6年（734年）には、大部分の官稲が正税という形に統一されました。しかし、この統合は長続きせず、天平16年（744年）には国分二寺稲が各国に分配され、その翌年には正税の一部が分離されて公廨稲が創設されました。これにより、官稲は正税、公廨、雑稲に分類され、その運用方法が明確化されたのです。

• - 正税: 大税や郡稲の役割を引き継ぎ、国の通常や臨時の経費を賄うために使用されました。また、一部は中央に送られることもありました。
• - 公廨: 不足する官物を補填し、官人の俸給の支払いや中央への進物の輸送費に充てられました。
• - 雑稲: 特定の目的に応じた資源で、救急資金や特別な用途に使われることがありました。

これらの定額制度は、弘仁式や延喜式の法律に基づいて定義され、官稲の運用が記録されました。しかし、10世紀になると出挙の運営は次第に難しくなり、官稲の仕組みは徐々に解体されていくこととなりました。

結論

官稲は、古代日本における重要な財源であり、出挙の仕組みを通じて国家の運営を支える役割を果たしていました。その変遷を通じて、官稲は税制や農業政策のあり方を映し出す重要な要素となり、当時の社会経済に多大な影響を与えたのです。日本の歴史において官稲の存在を理解することは、古代国家の財政制度や社会構造を知る上で欠かせないものです。

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