定数群体

定数群体について

定数群体（ていすうぐんたい）は、英語で言うところの「coenobium」であり、特定の細胞からなる特殊な藻類の集まりです。この群体は、一般的に無性生殖によって形成される個体が一体となって、互いに連結しながら集まっています。これは植物の株立ちとは異なり、藻類に特有の現象です。

群体の特徴

先行研究では、藻類における典型的な群体としてユードリナ（タマヒゲマワリ）が挙げられます。この種は、16個の球形の細胞が寒天質の内部表面に配置された構造を持ち、各細胞は鞭毛を持ち、単細胞生物であるクラミドモナスと似ている点が特徴的です。

ユードリナの特異性は、群体の成長に伴って細胞数が増加しない点にあります。一般的に、群体形成生物では成長に伴あり細胞数が増えますが、このユードリナでは細胞数が常に一定であるという特性を持っています。これが「定数群体」としての名前の由来です。

無性生殖のメカニズム

ユードリナは無性生殖を行う際に、構成する全細胞が同時に細胞分裂を起こし、16個の新しい細胞が小さな群体として分かれます。このように、各細胞が新しい群体を形成するため、細胞数は常に一定に保たれるのです。このような定数群体の形成は非常に特異であり、他の単細胞生物群体とは一線を画します。

進化との関連

定数群体の構造には進化的意義があります。ボルボックス目の藻類では、群体の形に進化的な系譜が見られ、ユードリナやゴニウムのような種類では細胞数や配置に変化がありますが、同型細胞が集まり群体を作ります。進化の過程で、プレオドリナのように細胞の大きさに分化が見られる場合もあります。これに対し、発達したオオヒゲマワリという種では、栄養細胞と生殖細胞が明確に分化しています。

オオヒゲマワリは多細胞モデルとも考えられており、その細胞の分化が多細胞動物の起源を示唆するものとして注目されています。過去には、オオヒゲマワリが多細胞動物の直接的な祖先であるかのような議論もされましたが、現在ではその類縁関係は薄いとされています。

分類群

定数群体に属する生物は、主に緑藻綱に分類されます。具体的には、オオヒゲマワリ目とヨコワミドロ目に分かれます。オオヒゲマワリ目には、無性生殖時に個々の細胞が分裂して新たな群体を形成するものが多いため、細胞の数と配置が種類によって異なります。一方、ヨコワミドロ目は、運動性が無く、イカダモなどで見られる独特な群体の形が観察されます。

最後に、これら藻類の群体は、一見すると多細胞のように見えますが、それにもかかわらずその成り立ちは大きく異なるため、進化や生物学的多様性の観点から非常に興味深い存在です。定数群体を通じて、原生生物と多細胞生物の間の相違について考察することが、一層の理解を深める鍵となります。

もう一度検索