宝永大噴火

宝永大噴火：富士山を揺るがせた未曽有の災害とその教訓

1707年（宝永4年）、富士山は歴史上最大規模の噴火を起こしました。これが宝永大噴火です。この噴火は、記録に残る富士山の噴火の中でも最大規模であり、現代社会にまで影響を与え続けている重要な出来事です。

噴火の概要と特徴

宝永大噴火は、延暦大噴火（800～802年）や貞観大噴火（864～866年）と並ぶ富士山の三大噴火の一つに数えられています。約2週間続いた噴火活動は、火山爆発指数VEI5のプリニー式[[噴火]]と推定され、大量の火山灰を上空約20kmまで噴き上げました。その火山灰は、100km以上離れた江戸にも降り積もったと記録されています。噴火による直接の死者は記録されていませんが、大量のスコリアや火山灰の降下による火災、急激な堆積による被害は甚大で、特に富士山の東側地域で大きな爪痕を残しました。溶岩流は確認されていませんが、地下20km付近のマグマが滞留することなく上昇したため、爆発的な噴火となったと考えられています。噴火活動は富士山の東南斜面で発生し、3つの火口（宝永山）が形成されました。現在でも、宝永山は登山道が整備されているため、登山が可能です。

被害と復興

宝永大噴火で噴出した火山灰の量は約1.7立方キロメートルに達し、関東地方一円に降り注ぎました。農作物への影響は壊滅的で、被災地の復興は容易ではありませんでした。特に、酒匂川流域では、堆積した火山灰によって河川の水位が上昇、堤防決壊による洪水被害が100年以上続きました。幕府は全国の藩に課税を行い、被災地の復興に尽力しましたが、小田原藩など、被災した地域では、噴火から20年以上経っても復興が困難な地域が多く、小田原藩の米の収穫量が元に戻るまでには約90年もの歳月を要しました。酒匂川流域の復興には、大岡越前守忠相に見出された田中休愚が尽力し、享保11年（1726年）から本格的な復興事業が始まりました。

富士山の噴火史と時代背景

富士山の火山活動は、小御岳火山、古富士火山、そして現在の新富士火山の3つの時代に分けられます。宝永大噴火は新富士火山時代の活動であり、平安時代の延暦大噴火や貞観大噴火に匹敵する規模の噴火でした。噴火が起こった時期は、徳川綱吉の治世末期、元禄文化が花開いた時代です。当時の記録には、噴火を綱吉の悪政による天罰とする記述も見られます。これは迷信ですが、当時の社会状況を表す興味深い一例といえるでしょう。

宝永大噴火の推移と詳細

宝永大噴火は、宝永4年11月23日（1707年12月16日）に始まりました。噴火前には、マグニチュード8.6～9と推定される宝永地震が発生しており、この地震との関連性が指摘されています。噴火は、最初白っぽい火山灰を降らした後、黒っぽい火山灰やスコリアを降らすなど、噴出物の成分が変化していきました。江戸にも大量の火山灰が降り注ぎ、新井白石の『折たく柴の記』など、当時の記録には、降灰による江戸の町の様子が生々しく記されています。また、柳沢吉保が甲府藩主であった当時、甲府で採取された火山灰が現在も現存しています。噴火は約2週間続き、12月8日（12月31日）に終焉を迎えました。

二次災害と現代社会への教訓

宝永大噴火による被害は、直接的なものだけでなく、二次災害も甚大でした。降下した火山灰は、河川に流れ込み、土石流や洪水を引き起こしました。こうした二次災害は、噴火後100年以上も続いたと推定されています。現在でも、宝永火口周辺では、火山灰やスコリアの二次的な移動が続いており、土石流による被害が発生しています。

富士山ハザードマップ検討委員会は、宝永大噴火と同規模の噴火が起きた場合の被害想定を詳細に検討しています。その結果、火山灰による広範囲での交通網麻痺、電子機器の故障、呼吸器疾患の増加などが予測されています。宝永大噴火は、過去の災害から学ぶことの重要性を改めて認識させる、貴重な教訓となっています。

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