甲府藩

甲府藩：甲斐国の歴史を彩る藩の興亡

甲府藩は、現在の山梨県にあたる甲斐国に存在した藩です。戦国時代、武田氏は甲府盆地に拠点を構え、躑躅ヶ崎館を中心に城下町を整備しました。武田信玄、勝頼の時代には領国拡大も果たしましたが、長篠の戦いでの敗北をきっかけに衰え、織田・徳川連合軍の侵攻によって滅亡しました。

武田氏の滅亡後、甲斐国は一時的に織田信長の家臣、河尻秀隆の支配下に入りますが、本能寺の変により無主状態に陥ります。その後、徳川家康の支配下に置かれ、家臣の平岩親吉が甲府城の普請を命じられました。天正18年（1590年）、家康の関東移封に伴い、甲斐国は豊臣系の諸大名が入封するなど、複雑な情勢が続きます。

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦い後、浅野幸長が甲府を支配しましたが、紀州へ移封されたため、甲府は再び徳川氏の支配下に置かれます。徳川家康の子息である徳川義直が甲府に入りますが、幼少のため平岩親吉の後見を受けました。その後、徳川秀忠の三男、徳川忠長が甲府に入り、甲府城番が設置されます。元和2年（1616年）、徳川忠長が正式に甲府藩主となりますが、寛永9年（1632年）には素行の悪さから改易され、甲斐国は幕府直轄領となりました。

甲府藩が成立したのは慶安4年（1651年）、3代将軍徳川家光の三男、徳川綱重が甲斐を拝領した時です。綱重は家臣団への知行宛行や支配機構の整備を進め、藩政支配を確立しました。延宝6年（1678年）の綱重の死後、跡を継いだ徳川綱豊（後の6代将軍家宣）は、宝永元年（1704年）に将軍職に就き、側用人の柳沢吉保が甲府藩主となりました。その後、柳沢吉保の子、柳沢吉里が藩主を継ぎましたが、享保9年（1724年）の享保の改革において、財政強化のため柳沢吉里は郡山藩に移封され、甲府藩は再び幕府直轄領となりました。

幕府直轄領となった甲斐国は、甲府勤番によって支配されました。甲府勤番は、江戸幕府の職制で、甲府城代も置かれました。戊辰戦争では、甲府は旧幕府軍と新政府軍が激突する場所となり、明治維新後、甲斐府となりました。

甲府藩は、武田氏から徳川氏、そして柳沢氏と、異なる勢力が支配する歴史を歩みました。その過程において、甲府城や甲府勤番といった制度が整備され、甲斐国の政治・経済の中心地として重要な役割を果たしました。また、太枡騒動や天保騒動といった、藩内や周辺地域を巻き込む大規模な事件も発生しており、その歴史は多様な出来事に彩られています。甲府藩の歴史は、甲斐国の歴史、ひいては日本の歴史を理解する上で欠かせない要素となっています。

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