実尾島事件

実尾島事件（シルミド事件）

実尾島事件（シルミドじけん）は、1971年8月23日に韓国で勃発した反乱事件である。この事件は、北朝鮮への派遣を目的として編成された特殊部隊の兵士たちが、自らの待遇に対する不満から反乱を起こしたものであり、最終的には韓国軍と警察によって鎮圧された。反乱の背景には、特殊部隊の創設とその後の南北情勢の変化が大きく関与していた。

背景と部隊の創設

事件の発端となったのは1968年1月21日に発生した青瓦台襲撃未遂事件である。この事件では、北朝鮮が派遣した朝鮮人民軍の部隊が韓国に侵入し、韓国の大統領官邸である青瓦台を襲撃しようとしたが、失敗に終わった。この襲撃を指揮した隊員が一人捕虜となり、その供述から朴正煕大統領は北朝鮮に対する報復を決意した。

朴政権は、報復としてゲリラ作戦を企て、この際に創設されたのが空軍2325戦隊209派遣隊（後の684部隊）である。隊員は民間人から募集され、過酷な訓練を受けながら北朝鮮への侵入や金日成主席の暗殺計画を待ち受けていた。しかし、南北の融和が進む中で、その計画は次第に後退していき、最終的には撤回されることになった。

南北融和と隊員の不満

1970年にアメリカの大統領がリチャード・ニクソンに変わったことで、在韓米軍の削減が発表された。この発表を受けて、北朝鮮が統一会談を提案する一方で、684部隊はその目的を失った。隊員たちは島に幽閉される形になり、彼らの待遇は改善されることはなかった。そのため隊員たちの中では不満が募り、最終的には反乱を引き起こす事態に至った。

反乱の勃発

1971年8月23日、684部隊の24名の隊員が反乱を決意し、教育隊員を殺傷した。彼らは実尾島から脱出し、仁川に向かうバスを乗っ取って韓国大統領への直訴を目指した。しかし、途中で軍と警察との交戦が発生し、最終的には永登浦区にて銃撃戦が繰り広げられた。反乱の末、彼らは自爆し、20名が死亡し、唯一生き残った4名は後に捕らえられ軍法会議で死刑判決を受けた。

事件後の影響と見直し

実尾島事件は、その後長い間韓国の軍事政権下で隠蔽されてきたが、民主化が進む中で次第にその詳細が明らかにされていった。2003年には映画『シルミド』が公開され、事件の認知度が高まったが、映画の内容については遺族からの反発もあった。さらに、国家も調査に着手し、2005年には事件に関与した隊員の遺族に対して死亡通知書を交付した。

2021年には、文在寅政権のもとで真実・和解委員会が再調査に着手することとなり、国防省は死刑された隊員の遺骨を発掘する作業を進めている。この事件は、韓国における歴史認識や軍事政権の影響による隠蔽の象徴的な事例とされており、今なお多くの議論を呼んでいる。

関連作品

実尾島事件を基にした作品には、映画『シルミド』（2003年）や、多くの書籍が存在し、事件の真実を掘り起こそうとする取り組みが続けられている。

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