実成院 (徳川家茂生母)

実成院（じつじょういん）とは

実成院（1821年 - 1904年）は、江戸幕府14代将軍徳川家茂の生母であり、紀州藩主徳川斉順の側室です。その生涯は、激動の時代を背景に、将軍の母としての役割と、一人の女性としての人生が複雑に絡み合っていました。

生い立ちと家系

実成院は、文政4年（1821年）に紀州藩の由緒ある高家、久松松平家の松平晋の娘として生まれました。この家系は、徳川頼宣に仕えた松平忠勝を祖とし、代々紀州藩に仕えていました。実成院の兄である松平庸は、家茂の伯父にあたることから加増され、実成院が江戸城に引き取られると同時に幕府旗本となり、幕府新番頭に就任しました。一方、弟の松平忠寛は、兄の転属後に紀州藩に残り、大番頭に昇進しますが、長州征伐での敗戦責任を問われ、没落するという悲劇に見舞われました。

紀州藩での日々

実成院は、天保3年（1832年）に紀州徳川家に出仕し、側詰、中臈を経て、藩主徳川斉順の側室となりました。天保14年（1843年）には、斉順との間に伊曾姫をもうけますが、伊曾姫は夭折してしまいます。その後、斉順が亡くなり、実成院は斉順との間に生まれた菊千代（後の徳川家茂）を養育することになりました。

江戸城へ

菊千代が数え4歳で紀州藩主を継ぎ、元服して慶福と名乗ると、実成院は落飾して実成院と号しました。安政5年（1858年）、慶福が14代将軍徳川家茂として江戸城に入ると、文久元年（1861年）に実成院も将軍生母として江戸城に入城しました。新御殿には先代将軍の生母や御台所が住んでいたため、実成院は七宝の間に居住しました。

大奥での生活

江戸城では、家茂の正室として和宮を迎えるなど、華やかな出来事もありましたが、実成院自身は派手好きで、朝から酒を飲み乱痴気騒ぎをすることもあったと伝えられています。慶応2年（1866年）に家茂が亡くなった後も江戸城に住み続けましたが、慶応4年（1868年）の江戸開城に伴い、和宮と共に田安徳川邸に移りました。

その後

明治37年（1904年）、東京千駄ヶ谷の紀州徳川邸にて84歳で生涯を閉じました。その遺体は、寛永寺に葬られ、本寿院と並んで眠っています。

実成院が登場する作品

実成院の生涯は、映画やテレビドラマ、舞台劇など、様々な形で描かれています。

映画：『朱雀門』（1957年）
テレビドラマ：『大奥』（2003年）
舞台劇：『大奥』（2007年、2010年）

参考文献

実成院に関する研究は、『南紀徳川史』に詳しい記述があります。

堀内信『南紀徳川史・第二冊』
堀内信『南紀徳川史・第三冊』
堀内信『南紀徳川史・第五冊』

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