実聖尼師今

実聖尼師今（じっせいにしきん）：激動の時代を生きた新羅第18代の王

実聖尼師今（生年不詳 - 417年）は、5世紀初頭の新羅を統治した第18代の王であり、金氏を名乗りました。彼の治世は、高句麗との複雑な関係、倭（倭国）との激しい戦い、そして最後は暗殺という劇的な結末を迎えたことで知られています。

生い立ちと即位

『三国史記』によれば、実聖尼師今の父は伊飡（イチャン、2等官）の大西知（テソチ）、母は昔氏の阿飡（アチャン、6等官）登保の娘である伊利夫人（イリプイン）とされています。王妃は第13代味鄒尼師今の娘である保反夫人（ポバンブイン）でした。

しかし、『三国遺事』では、父を味鄒尼師今の弟である大西知角干（カクカン、1等官）、母を昔氏の登也阿飡の娘である礼生夫人（イェセンブイン）、王妃を金氏の阿留夫人（アルプイン）と記しており、記録に食い違いが見られます。

実聖尼師今は、若い頃に高句麗に人質として送られました。帰国後、先代の奈勿尼師今（ナムルニシキン）が402年に亡くなると、太子を差し置いて国人によって王位に推挙されました。これは、高句麗との関係が深く、当時の政治情勢が複雑であったことを示唆しています。

治世：外交と戦争の時代

実聖尼師今は即位後、倭国との国交を樹立し、先王の子である未斯欣（ミサフン）を人質として送りました。しかし、その後は倭の侵攻が相次ぎました。405年には明活城（ミョンファルソン）を攻められましたが、自ら騎兵を率いて倭軍を撃破しました。その後も、倭の侵入は続き、408年には対馬で軍備を整えているとの情報を得て出征を試みましたが、舒弗邯（ソブルハン、1等官）の未斯品の諫めにより中止しました。415年には風島（プンド）で倭軍を破っています。

また、倭だけでなく、百済からの侵入もありました。外交面では、412年に高句麗に対して先王の子である卜好（ボホ）を人質として送っています。この背景には、実聖尼師今が高句麗に人質として送られたことへの恨みがあり、奈勿尼師今の子を殺すことで復讐しようとしたという説もあります。

内政面では、413年に平壌州（ピョンヤンジュ）に大橋を建設しました。

悲劇的な最期

実聖尼師今の死については、『三国史記』では「在位16年にして417年5月に薨去した」と簡潔に記されています。しかし、『三国史記』の訥祇麻立干紀（ヌルギマリプカンギ）や『三国遺事』では、訥祇麻立干によって殺害されたとされています。

実聖尼師今が、かつて自身を高句麗に人質として送った奈勿尼師今の子である訥祇を殺害しようと企てたことが原因でした。高句麗人に依頼して訥祇を殺させようとしましたが、その高句麗人が訥祇の人柄に感銘を受け、逆に実聖尼師今の害意を訥祇に伝えたため、訥祇が自ら実聖尼師今を殺害して王位を奪ったとされています。

実聖尼師今の正確な埋葬地は不明ですが、慶尚北道慶州市にある皇南大塚（ファンナムデチョン、98号古墳）の南陵が、実聖尼師今の王陵であるという説があります。

実聖尼師今は、高句麗、倭、百済といった周辺諸国との複雑な関係の中で、新羅の存続を図った王でした。彼の治世は、外交と戦争に明け暮れ、最後は暗殺という悲劇的な結末を迎えましたが、その生涯は新羅の歴史において重要な意味を持っています。

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