訥祇麻立干

訥祇麻立干（とつぎ まりつかん）

訥祇麻立干（生年不詳 - 458年）は、新羅の第19代の王（在位:417年 - 458年）であり、金氏を名乗りました。第17代奈勿尼師今の長男として生まれ、母は第13代味鄒尼師今の娘である保反夫人、王妃は先代の実聖尼師今の娘でした。彼は417年5月に実聖尼師今を殺害し、王位を簒奪したとされています。

治世

訥祇麻立干の治世は、周辺諸国との関係において重要な転換期を迎えました。即位翌年の418年には、高句麗と倭に人質として送られていた王弟が帰国し、高句麗からの従属的な体制からの脱却を目指しました。百済の毗有王とは433年以来、使節や貢物を頻繁に交換し、新羅もまた百済に返礼を贈ることで、両国は高句麗に対抗するための同盟（羅済同盟）を強化しました。

450年7月には、高句麗の辺境の首長が悉直（現在の江原道三陟市）付近で狩猟をしていたところ、何瑟羅（現在の江原道江陵市）の城主である三直によって急襲され、殺害されるという事件が発生しました。この事件は高句麗との間に緊張をもたらし、怒った高句麗の長寿王は新羅の北西部国境に軍を派遣しました。しかし、新羅は丁寧な謝罪を行い、高句麗軍は一旦退却しました。その後も、高句麗は454年8月に新羅北部辺境に侵入し、455年10月には百済に侵入しました。これに対し、訥祇麻立干は百済への救援兵を派遣し、同盟関係を維持しました。

また、訥祇麻立干の時代には、倭との交戦も頻繁に発生しました。431年4月、440年6月、444年4月には倭人の侵入を受け、特に444年の侵入では首都金城（現在の慶州市）が10日以上にわたって包囲されました。食料が尽きて撤退しようとする倭軍に対し、群臣の反対を押し切って追撃した結果、数千騎の将兵の大半を失うという失態を演じました。

訥祇麻立干は、在位42年にして458年8月に死去しました。彼の埋葬地は伝わっていません。

王号について

『三国史記』や『三国遺事』には、金大問の解説として、「麻立」とは「橛（切株）」の方言で座席を意味し、王を中心に臣下が周りに並ぶ様子から「麻立干」と名付けられたという説が紹介されています。他にも、「麻立」を首長（干）とする説、新羅人名の尊称語尾とする説、高句麗の官位である莫離支を源流とする説など、様々な解釈が存在します。

脚注

『三国史記』第1巻 金富軾撰 井上秀雄訳注、平凡社〈東洋文庫372〉、1980 ISBN 4-582-80372-5
『三国遺事』坪井九馬三・日下寛校訂＜文科大学史誌叢書＞東京、1904（国立国会図書館　近代デジタルライブラリー）

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