実顕

実顕：戦国時代の浄土真宗僧侶

実顕は、戦国時代の浄土真宗の僧侶として、越前国から加賀国へと活躍の場を移し、大きな影響力を持つ人物でした。1488年（長享2年）、浄土真宗の寺院である越前超勝寺の住持、蓮超の子として誕生しました。母は本蓮寺住持の娘で、妻は願証寺・顕証寺住持の娘という、浄土真宗における名家の出身でした。

父である蓮超の死後、若くして超勝寺の住持を継いだ実顕でしたが、1506年（永正3年）に発生した九頭竜川の戦いにおいて朝倉軍に敗北を喫し、加賀国へと逃れました。この敗北によって越前での勢力を失うこととなりますが、加賀江沼郡に新たな拠点を築き、活動を続けます。

転機が訪れたのは1525年（大永5年）のことです。本願寺第10世法主となった証如の後見人となったのは、実顕の外祖父にあたる蓮淳でした。この縁故から、実顕は北陸における本願寺の代官に任命されることとなります。

代官としての実顕は、下間頼秀・頼盛兄弟と共に荘園の横領や年貢の未納を行うなど、積極的な勢力拡大を図りました。しかし、その強引な手法は、本願寺の代行寺院である本泉寺や松岡寺、光教寺の住持たちとの対立を招き、1531年（享禄4年）には、大小一揆と呼ばれる大規模な紛争へと発展しました。

この一揆において、実顕は本覚寺の蓮恵や外祖父である蓮淳の指示を受け、畿内や東海地方の門徒、そして下間兄弟らの支援を得て、本泉寺などの小一揆勢力と激しく戦いました。朝倉宗滴や畠山家俊といった有力武将も小一揆に加勢したものの、実顕らの勢力はこれを撃破し、小一揆勢力を亡命へと追い込みました。この勝利によって、実顕は本覚寺と並んで加賀における実質的な支配者としての地位を確立することとなりました。

その後、1542年（天文11年）に実顕は亡くなりました。彼の死後、跡を継いだのは嫡男である実照でした。実顕の生涯は、戦国時代における浄土真宗の勢力拡大、そして宗教勢力と政治勢力との複雑な関係性を示す、重要な事例となっています。彼の行動は、当時の北陸地方の政治と宗教の情勢に大きな影響を与え、その功罪は現在も研究が続けられています。実顕の生き様は、現代においても宗教と政治、権力と社会秩序、そして信仰と現実の複雑な関わりを考える上で貴重な示唆を与えてくれるでしょう。

参考文献

浅香年木『北陸真宗教団史論 小松本覚寺史』能登印刷出版部、1983年
辻川達雄『蓮如と七人の息子』誠文堂新光社、1996年
* 柏原祐泉・薗田香融・平松令三監修『真宗人名辞典』法藏館、1999年

もう一度検索