証如

戦国を生き抜いた宗教家：本願寺第10世宗主・証如の生涯

証如（しょうにょ）は、戦国時代を代表する浄土真宗の僧侶であり、本願寺派第10世宗主、そして真宗大谷派第10代門首を務めた人物です。山科本願寺、大坂本願寺の住職も歴任し、その生涯は数々の激動と偉業に彩られています。諱は光教、院号は信受院、法印権僧正という高い位階にありました。父は円如、祖父は蓮如であり、名門に生まれた証如は、九条尚経の猶子にもなり、朝廷との深い繋がりを持っていました。正室は庭田重親の娘、顕能尼であり、後に石山本願寺で活躍する顕如を長男としています。

激動の時代を生き抜く：幼少期から本願寺宗主へ

永正13年（1516年）、証如は円如の子として誕生しました。幼名は光養丸。大永5年（1525年）、わずか10歳で祖父にあたる実如の死去に伴い、本願寺第10世宗主の座を継承するという、想像を絶する重責を担うことになります。まだ幼少であった証如を支えたのは、母方の祖父にあたる蓮淳でした。蓮淳の後見のもと、証如は本願寺の運営と教団の維持に尽力していきます。

大永7年（1527年）、証如は青蓮院で得度。さらに、前関白九条尚経の猶子となり、朝廷から直叙法眼に任じられました。この朝廷との緊密な関係は、後の証如の活動に大きな影響を与えます。

享禄・天文の乱と山科本願寺の戦い：内紛と大坂への移転

享禄4年（1531年）、本願寺教団内部で激しい対立（享禄・天文の乱）が勃発します。証如は、この内紛を鎮圧し、法主としての指導力を強化しました。この内紛は、加賀国における本願寺勢力の拡大にも繋がります。

享禄5年（1532年）、証如は細川晴元からの要請を受け、軍事行動に参加します。本願寺勢は、畠山義堯を滅ぼし、三好元長を敗走させますが、その過程で門徒の暴走を招き、晴元と対立します。結果、山科本願寺は六角勢と法華宗徒によって焼き討ちに遭い、証如は大坂御坊へ移転、大坂本願寺を新たな本拠地としました。細川晴元との争いは天文4年（1535年）まで続き、証如は多額の賠償金を支払うことで和睦を達成します。

教団再建と朝廷・幕府との関係修復：大坂本願寺での活動

山科本願寺を失った後、証如は、大坂本願寺を拠点として教団の再建に力を注ぎました。晴元との協調関係を築き、朝廷や室町幕府との関係修復にも尽力します。大坂御坊の整備も進められ、阿弥陀堂の新造など、寺は着々と発展しました。天文12年（1543年）には長男・顕如が誕生、教団の未来を担う後継者が誕生します。天文15年（1546年）には金沢に尾山御坊を築き、加賀国における門徒の統制強化を図りましたが、これは完全には達成されませんでした。

後世への遺産：晩年と死後

天文18年（1549年）、後奈良天皇から『三十六人家集』を下賜されるなど、朝廷からの厚い信頼を得ていました。権僧正にも任じられ、証如の権威は揺るぎないものとなっていました。天文23年（1554年）、証如は39歳でこの世を去ります。後を継いだのは12歳の顕如でした。

証如は、宗教活動に加え、領主としての側面も持ち、寺内町の統治、近隣勢力との交渉など、多様な役割を担っていました。彼の活動は、単なる宗教家という枠を超え、戦国時代の政治・軍事にも深く関与した、複雑で多面的な人物像を浮かび上がらせます。証如の生涯と功績は、戦国時代の宗教史、社会史を理解する上で、極めて重要な意味を持つと言えるでしょう。彼の残した『天文日記』は、当時の状況を知る貴重な史料となっています。

もう一度検索