宣旨 (役職)

宣旨についての詳細な考察

「宣旨（せんじ）」は、日本の公家社会において、女房の中でも特に重要な役割を担う女性の最高職を指します。俗に「せじ」とも称され、天皇の後宮における中心的な女官の一人として、皇后や皇太子に仕えました。この地位は主に、第一秘書のような役割を果たすものであり、女房集団を統括する立場にありました。

宣旨の役割と出現の歴史

宣旨の起源は、約800年前後に遡ります。藤原薬子が皇太子安殿親王（後の平城天皇）のもとで初めて宣旨として記録されたのが確認されています。この職には、主として中宮（皇后）、東宮（皇太子）、斎院、そして院（上皇）にそれぞれ仕える役割がありました。

中宮宣旨は「宮の女房」の長であり、最も高い身分を有していました。彼女たちは高貴な家柄から選ばれ、中宮の命を代理で取り次ぐことが求められました。特に、緊急時にはその責任が重く、指揮をとって善後策を講じることもありました。中宮宣旨の出自は、主に上級貴族の娘たちで、既婚者も職務を続けることが一般的でした。

東宮宣旨は主に中級貴族の娘が担当しており、東宮に仕える乳母から昇進することが多かった。彼女たちは東宮の女房集団を指揮し、即位後には典侍に任ぜられることもありました。

斎院宣旨は、未婚の皇女に仕える役で、文学的才能を有する者も多く、『狭衣物語』の著者もこの職にあったことから、その重要さが伺えます。

職務と文化的意義

宣旨の職務は非常に多様で、文化的にも重要な役割を持っていました。中宮宣旨たちは優れた教養を有し、多くの歌や文学作品を残しました。彼女たちの詩や歌は『後撰和歌集』や『後拾遺和歌集』に見られるように、後世にも影響を与えました。特に、主君の意に従い、出仕する場合があり、その評価は高まりました。

職務を全うしながらも、恋愛対象としても高い身分にいた彼女たちは、貴族たちからしばしば求愛されました。中でも藤原彰子に仕えた源陟子はその美しさで知られ、当時の文学作品にも取り上げられることとなりました。

宣旨の変遷と名誉職化

宣旨の地位については、時代と共に変遷がありました。11世紀半ばから末にかけて、中宮御匣殿が首位となり、名誉職化が進んだとされています。このため、宣旨の役職に就く者が減少し、名誉職という意識が薄れていった一因と見られています。そのため、鎌倉時代にはどちらが上かが不明確な状況が生まれました。

まとめ

宣旨は、日本の公家社会において非常に重要な役割を果たした女性職であり、その中で果たした文化的な役割も決して軽視することはできません。彼女たちの職責や出自、さらには歴史的な背景は、当時の女性の地位や役割を知る上で重要な要素となっています。宣旨としての職務は、時代と共に変わりつつも、今なお文化的な影響を与え続けていることがわかります。

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