宣王 (周)

宣王（せんおう）は、周王朝の第11代王として知られています。彼の生涯は、周王朝の中興と衰退という二つの側面を色濃く映し出しています。父である厲王（れいおう）の時代、その圧政により国は混乱し、厲王は逃亡を余儀なくされました。その後、共和制を経て、紀元前828年に厲王が崩御すると、その子である静が宣王として即位しました。

宣王の治世初期は、周王朝の定公と召の穆公という二人の重臣の補佐を受け、政治は安定しました。この時期は「宣王中興」と呼ばれるほど、国勢は回復し、周王朝は一時的な繁栄を取り戻しました。宣王は新興諸侯として、弟の王子友を鄭に封じるなど、領土の拡大にも努めました。これらの功績は、宣王の優れた統治能力を示すものとして評価されています。

しかし、宣王の治世は平穏なものではありませんでした。軍事面では、秦仲や杜伯といった将軍に命じて異民族への積極的な征伐を行いましたが、戦況は徐々に悪化しました。特に、紀元前789年の千畝の戦いでは、姜戎に大敗を喫するなど、軍事的な失態が目立ちました。

治世後期に入ると、宣王は政治面でも変化を見せ始めます。父の厲王に見られたような君主独裁化を進め、諸侯への圧力を強めていきました。魯の継嗣問題への介入や、杜伯の処刑などは、その強権的な姿勢を象徴する出来事です。これらの政策により、諸侯からの不満は高まり、周王朝の求心力は徐々に低下していきました。

宣王の最期については、確かな記録が残されていません。『墨子』によれば、杜伯を処刑した3年後、鬼神の力を借りた杜伯によって射殺されたとされています。この説話は、宣王の晩年の失政と、それに対する民衆の不満を物語っているとも解釈できます。賛否両論ある王ではありましたが、結果として父の厲王や子の幽王と同じく、周王朝の滅亡を早めた暴君・暗君と評価せざるを得ない面もあります。

文化面では、宣王の時代に、籀（ちゅう）によって『史籀篇』（しちゅうへん）が著され、書体のひとつである大篆にあたる籀文（籀書）が創られました。これは、文字文化の発展に大きく貢献した出来事であり、宣王の時代が文化的に重要な時期であったことを示しています。

このように、宣王の生涯は、周王朝の盛衰を象徴するものであり、彼の治世は、多くの教訓と考察を私たちに与えてくれます。中興の祖としての側面と、晩年の失政による衰退という二つの側面を持つ宣王は、歴史の中で複雑な評価を受ける人物であると言えるでしょう。

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