室内小協奏曲 (イベール)

アルト・サクソフォーンと11の楽器のための室内小協奏曲

ジャック・イベールが1935年に完成させたこの作品は、アルト・サクソフォーンのための室内協奏曲であり、演奏時間は約12分です。フランス語では「Concertino da camera pour saxophone alto et onze instruments」と表記されます。

作曲の経緯

1933年、ストラスブールで開催された現代音楽祭で、ドイツ出身のサクソフォーン奏者ジーグルト・ラッシャーの演奏に感銘を受けたソプラノ歌手マリー・フロイントが、イベールにラッシャーのための作品を依頼したことが作曲のきっかけです。イベールにとってサクソフォーンのための作品はこれが初めてであったため、作曲にあたり、サクソフォーン奏者のマルセル・ミュールに助言を求め、試奏を依頼しました。

1935年に曲は完成し、当初の予定通りラッシャーに献呈されました。ラッシャーは1年間の独占演奏契約を結びましたが、イベールは曲の誕生に貢献したミュールによる演奏を希望し、ラッシャーによる公的な初演に先立ち、ミュールによる放送初演が行われました。

初演

放送初演：1935年5月2日、フランス放送局、マルセル・ミュールによる演奏。
公的初演：1935年12月11日、スイスのヴィンタートゥール、ジーグルト・ラッシャーによる演奏。

編成

独奏アルト・サクソフォーンに加え、以下の11の楽器が用いられます。

フルート
オーボエ
クラリネット
ファゴット
ホルン
トランペット
ヴァイオリン2
ヴィオラ
チェロ
コントラバス

弦楽器はコントラバスを除き、多少増やすことが可能です。

構成

全2楽章構成です。

第1楽章 Allegro con moto

ソナタ形式で、4分の2拍子です。短い序奏の後、サクソフォーンが生き生きとした第1主題を奏でます。トゥッティを経て、ファゴットと弦に支えられ、サクソフォーンが伸びやかな第2主題を歌い、徐々に高揚していきます。静かになった後、展開部に入り、第1主題のみが再現されて終わります。

第2楽章 Larghetto - Animato molto

序奏を伴うロンド形式で、序奏は4分の3拍子です。サクソフォーンが独白のように無伴奏で語り始め、弦楽器が入ってから穏やかな主題が奏でられます。拍子が4分の2拍子に変わり、活発な無窮動風のロンド主題が弦楽器、サクソフォーンの順に現れます。続いて、サクソフォーンで奇想曲風の副主題が奏でられます。2つの主題が発展した後、カデンツァ、主題再現と進み、軽快に締めくくられます。

参考文献

『最新名曲解説全集10 協奏曲III』（矢代秋雄執筆）（音楽之友社）ISBN 4-276-01010-1
CDライナーノーツ（EMI国内盤、ジョン・ハールサクソフォーン独奏 - 赤松文治 執筆）
属啓成『名曲事典』（1991年第16刷発行 音楽之友社）ISBN 4-276-00120-X

外部リンク

室内小協奏曲の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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