室山の戦い

室山の戦い

室山の戦い（むろやまのたたかい）は、寿永2年（1183年）11月29日に、播磨国室山（現在の兵庫県たつの市御津町室津港の背後にある丘陵）で起こった戦いです。この戦いは、源行家率いる軍勢が、平知盛・平重衡率いる平氏軍に攻撃を仕掛けたものの、敗北した戦いとして知られています。

戦いの背景

寿永2年（1183年）7月末、源義仲と源行家は平氏を都から追い落とし入京を果たしました。しかし、その直後から両者の間には主導権争いが起こり、不和が生じ始めます。弁舌巧みな行家は後白河法皇に接近し重用される一方、粗野な振る舞いの目立つ義仲は法皇の不興を買いました。義仲の劣勢が明らかになるにつれて、二人の関係はさらに悪化していきました。

義仲は後白河法皇の再三の要請を受け、9月20日に西国の平氏追討に向かいました。しかし、閏10月1日の水島の戦いで敗北し、15日に都へ戻ります。19日には義仲が法皇や公卿を連れて北陸へ向かうという噂が流れ、翌日には義仲がこの噂は行家が広めた嘘であると否定しました。法皇に取り入り出し抜こうとする行家と、平氏の脅威を阻止しようとする義仲の関係は、もはや修復不可能なほど険悪になっていました。

義仲の在京軍勢が瓦解し始める中、行家は公然と義仲と別行動を取り始め、11月8日には西国の平氏追討の任を朝廷から正式に受け、京を出陣します。しかし、『玉葉』によると、行家の軍勢はわずか270余騎であり、九条兼実もその少なさを不審に思っていました。

ほぼ同時期に、鎌倉の源頼朝から派遣された源義経と中原親能の軍勢が近江国に到着し、都の情勢を窺っていました。平氏、鎌倉、法皇、行家と四面楚歌の状態に陥った義仲は、完全に孤立し、その焦燥は11月19日の法住寺合戦で爆発する事になります。

戦いの経過

行家は、11月29日に播磨国室山に陣を構える平知盛・平重衡率いる平氏軍を攻撃しました。平氏軍は五段構えの陣形を敷き、攻め寄せる行家軍を巧みに誘い込み、包囲しました。行家軍は、郎従百余名を討たれるという大損害を受けながらも、なんとか包囲を突破し、高砂まで退却しました。その後、海路で本拠地の和泉国へ逃れ、さらに河内国へ移動し、長野城（大阪府河内長野市）に立て籠もりました。

戦いの影響

この行家の敗北は、平氏側に水島合戦に続く勝利をもたらし、都奪還の機運を高めました。知盛は即時上洛を主張しましたが、宗盛はこれに反対し、両者の間で口論が起こりました。12月には都で平氏上洛の噂が広まり、近江国に控える鎌倉軍の動きを警戒していた義仲を刺激しました。義仲は12月2日に平氏に起請文を送り和平交渉を試み、奥州の藤原秀衡に頼朝追討の院庁下文を出させようとしましたが、いずれも不調に終わりました。このように、様々な勢力が水面下で動く中、事態は宇治川の戦いへと発展していきます。

義仲は翌年の正月、河内国長野城に立て籠もり反旗を翻した行家を追討すべく、樋口兼光を派遣しました。しかし行家はまたも敗れ、紀伊国の名草へ逃げ込みました。その後、行家は義仲滅亡後の2月3日に再び都に戻り、義経に接近して鎌倉との対立を煽ることになります。

室山の戦いは、源氏内部の対立、平氏の勢力回復、そしてその後の歴史的展開を考える上で重要な戦いの一つと言えるでしょう。

関連項目

* 平家物語

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