宮内庁高根沢御料牧場

宮内庁高根沢御料牧場

宮内庁高根沢御料牧場は、1969年8月19日に栃木県塩谷郡高根沢町と芳賀郡芳賀町にまたがる丘陵地に開設された、皇室用の食材を生産する牧場です。総面積は約252ヘクタールに及び、耕地や放牧地、樹林地、施設などが含まれます。約70名の宮内庁職員が従事し、乳製品や食肉、野菜などを生産しています。

概要

標高145mの丘陵地に広がる牧場は、耕地・放牧地が134ヘクタール、樹林地が66ヘクタール、施設や通路が52ヘクタールで構成されています。牧場内には、搾乳所、製酪所、食肉加工場といった施設があり、ここで生産された食材は、園遊会や宮中晩餐会などの皇室行事で使用されるほか、内廷や宮家の食卓、宮内庁職員の食堂でも提供されています。また、皇族の静養施設や外交官の接待施設も併設されています。

畜産

乳牛としてホルスタイン種とジャージー種が飼育されており、これらの乳から牛乳、バター、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品が製造されています。乳が出なくなった乳牛は、下総煮という缶詰に加工されます。食肉用としては、豚（ランドレース種、バークシャー種）、羊（サフォーク種）、鶏が飼育されており、豚肉はハム、ソーセージ、ベーコン、レバーペーストなどに、鶏は鶏卵も生産しています。また、乗馬用のアラブ種やアングロアラブ、儀装馬車用のクリーブランド・ベイなども飼育されています。これらの家畜は放牧され、運動後には体を洗い、細菌管理や病気のチェックを受けるなど、徹底した健康管理が行われています。

農業

ダイコン、ニンジン、ホウレン草、トマト、レタス、ゴボウなど約20種類の野菜が栽培されており、温室ではイチゴが栽培されています。また、シイタケやタケノコも採取されています。これらの農産物は、定められた使用基準を遵守し、必要に応じて農薬も使用されています。

エピソード

開設当初から地元住民向けの見学会が行われていましたが、2016年度からは一般向けの見学会も実施されるようになりました。ただし、家畜伝染病予防のため、1回あたり約80人の事前応募制となっています。2022年度は見学会は中止されました。敷地内を南北に縦断する道路は一般の町道として利用可能です。かつて桜並木の名所でしたが、現在は伐採されています。

2011年の東日本大震災発生時には、天皇明仁・美智子両陛下の意向により、御料牧場で生産された卵、豚肉、サツマイモなどの食料品が被災者への支援物資として提供されました。

参考資料

秋葉龍一『天皇家の食卓 : 和食が育てた日本人の心』角川書店〈角川文庫〉、2000年8月。
福知怜『天皇家の生活99の謎』二見書房〈二見waiwai文庫〉、2002年3月。

関連項目

有機農業
自然農法

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