宮騒動

宮騒動（みやそうどう）とは

宮騒動は、鎌倉時代の寛元4年（1246年）に起きた、北条（名越）光時の反乱未遂事件と、前将軍・藤原頼経（九条頼経）が鎌倉から追放された事件を指します。この事件は、年号から寛元の乱、寛元の政変とも呼ばれ、また、首謀者の名から名越の乱、名越の変とも呼ばれています。

背景

この騒動の背景には、北条氏内部の主導権争いと、北条氏の傀儡となっていた将軍・藤原頼経の権力回復の意志がありました。第3代執権・北条泰時の死後、北条家内部では庶流が台頭し、嫡流である得宗家への不満が高まっていました。特に、北条泰時の庶長子を祖とする名越家は、得宗家に対抗する勢力として存在感を示していました。

一方、将軍・藤原頼経は、成人を迎えて自ら政権を握ることを望み、反執権勢力の御家人たちと連携を図っていました。しかし、これに危機感を抱いた当時の執権・北条経時は、寛元2年（1244年）に頼経を将軍の座から降ろし、自身の子である頼嗣を擁立しました。しかし、頼経はその後も「大殿」として鎌倉に留まり、幕府内に影響力を持ち続けました。

事件の経緯

寛元4年（1246年）に入ると、経時の病状が悪化し、弟の時頼に執権職を譲った直後に死去しました。経時の死を好機と見た名越光時は、頼経やその側近たちと連携し、時頼打倒を計画しました。しかし、時頼は事前にこの動きを察知し、機先を制しました。

閏4月18日深夜から、鎌倉市中に甲冑をつけた武士が群集し、様々な噂が飛び交う事件が起きました。これにより、頼経・光時側は混乱に陥りました。5月22日には安達義景邸周辺で騒動が拡大し、24日深夜の地震後、時頼は鎌倉と外部の連絡を遮断しました。頼経の元へ向かおうとした者は追い返され、光時兄弟が反逆を企てていることが発覚しました。

陰謀が発覚したことを悟った光時らは出家し、時頼に降伏しました。時頼は、頼経派の御家人たちへの対応を協議しましたが、大豪族である三浦泰村の動向が不明であったため、速やかな処断はできませんでした。その後、泰村が恭順の意を示したため、時頼方の勝利が確定しました。

6月7日、頼経側近らが罷免され、光時は所領を没収されて伊豆国江間へ配流となりました。頼経は7月11日に鎌倉を追放され、京都へ戻りました。これにより、鎌倉幕府内における北条時頼の権力が確立されました。

宮騒動の名称の由来

「宮騒動」という名称の由来は、『鎌倉年代記裏書』に「宮騒動」とあるためですが、「宮」を用いる理由は明確ではありません。事件の背後にいた九条頼経は「宮」と称されることはあり得ず、一説には、騒動の背景には、京都で後嵯峨天皇を廃して「六条宮」を擁立する計画があったとも言われています。

事件の影響

宮騒動は、北条時頼の権力基盤を確立し、得宗家による専制政治への道を開きました。また、この事件は、翌年の宝治合戦で三浦氏が滅亡する一因ともなりました。ただし、名越氏はその後も北条氏内部における反得宗勢力として残り、時頼の死後の二月騒動で再び敵対することになります。

後嵯峨・後深草天皇廃立計画説

騒動の背景には、鎌倉での執権勢力打倒と並行して、京都でも後嵯峨上皇・後深草天皇を廃し、順徳天皇系の「六条宮」を擁立しようとする計画があったという説も存在します。九条道家は関東の混乱に乗じて「六条宮」を皇位に就けようとしていると疑われたことを否定する願文を作成しています。この「六条宮」を巡っては様々な解釈が存在しますが、後鳥羽上皇が次代の治天として想定していた順徳天皇に近い皇族であったことは共通しています。

宮騒動は、鎌倉幕府の権力構造と朝廷の皇位継承問題が複雑に絡み合った事件であり、その影響は後の歴史にも及んでいます。

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