宰我

宰我（さい が）について

宰我は、孔子の弟子の中で特に注目される人物です。本名は予で、字は子我。彼は魯国出身であり、孔門十哲の一人として名を馳せました。弁論の才能に恵まれた宰我は、実利主義的な視点を持つことで知られ、時には道徳や礼を軽視してしまう一面もありました。そのため、彼は時折、孔子から叱責を受けたことが『論語』の中にも記されています。

宰我と孔子の関係

『論語』において、宰我は数回にわたり孔子とのやりとりが記録されています。その中で、例えば八佾篇では、荘公が宰我に社祭の様式について尋ねた際の彼の応答が見受けられます。宰我は、夏后氏は松、殷人は榧、周人は栗を用いると答え、孔子は彼の行動を戒める形で「成事不説、遂事不諫、既往不咎」と述べました。このやり取りには、彼が実際に道徳を軽視していたために孔子から指摘される様子が垣間見えます。

公冶長篇では、宰我が昼寝をしているところを孔子が叱り、朽木や糞土の例を引き合いに出して彼に警鐘を鳴らしています。これは、彼が何らかの改善を求められていることを示していると言えるでしょう。

また、雍也篇では、宰我が仁者について尋ねるシーンが見受けられ、孔子が「君子可逝也。不可陥也」と述べたことで、宰我が持つ道徳に関する理解の浅さを示唆しています。これらの記述からも、宰我が孔子との対話を通じて何らかの教訓を受け取ろうとしていたことが伺えますが、彼自身の実利主義的な性格がそのプロセスを妨げていたのかもしれません。

宰我の最期

宰我は後に斉国の長官となったとされていますが、彼の運命は悲劇的でした。田恒の反乱に加担し、その結果として一族が皆殺しにされたという話があります。しかし、史記の記述には宰我に関する混乱があると指摘されることもあります。というのも、『春秋左氏伝』や『呂氏春秋』には、同じ字を持つ別の子我という人物が登場し、宰我と混同される原因となっているのです。それでも、当時の人々には宰我の関与が広く知られていたようであり、彼が道徳を軽視することの代償を払ったという点は重要です。

宰我に関する文献

宰我に関する資料は『論語』の他にも多く存在します。特に、司馬遷の『史記』や『孔子家語』にも彼についての記述があります。さらに、小説『宰予　一　孔子から不仁な者と呼ばれた弟子の物語』は、彼の人生を題材にし、その実像に迫っています。

宰我は孔子の弟子として、道徳と実利の間で揺れ動く姿を描く貴重な存在であり、その生涯は今なお多くの人々に影響を与えています。彼から学ぶべき教訓は、ただの実利を追求することがいかに危険であるかを示していると言えます。

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