寂地峡

寂地峡：山口県錦町の息を呑む絶景峡谷

山口県岩国市錦町に位置する寂地峡は、西中国山地国定公園に属する雄大な峡谷です。錦川支流である宇佐川によって削り出されたこの渓谷は、その壮麗な景観から、西中国山地国定公園の三大渓谷の一つに数えられています。標高約300mに位置し、大きく分けて犬戻峡と竜ヶ岳峡の二つのエリアから構成されています。

犬戻峡：十八滝と五竜の滝

犬戻峡の最大の魅力は、なんといっても連続する無数の滝、犬戻十八滝です。中でも、五竜の滝はひときわ目を引きます。龍頭の滝、龍門の滝、白龍の滝、登龍の滝、龍尾滝という5つの滝からなるこの名瀑は、環境省選定の日本の滝百選にも選ばれており、その迫力ある水しぶきと美しい景観は訪れる者を圧倒します。それぞれの滝は個性的な姿を見せており、龍門の滝の落差18mは、そのスケールの大きさを物語っています。龍尾滝は上段と下段に分かれた段瀑となっており、変化に富んだ景観を呈しています。

竜ヶ岳峡：奇岩と岩屋の織りなす神秘的な空間

一方、竜ヶ岳峡は、犬戻峡とは異なる魅力を持っています。七ヶ所の滝を主軸に、大小様々な奇岩や岩屋が点在しており、神秘的な雰囲気に包まれています。岩肌の複雑な形状や、岩屋から聞こえる水のせせらぎは、自然の力強さと繊細さを同時に感じさせてくれます。犬戻峡のダイナミックな滝とは対照的な、静謐で幻想的な空間が広がっています。

豊富な湧水と名水百選

寂地峡は、その美しい景観だけでなく、豊富な湧水も大きな特徴です。清冽な水は、古くから地域住民の生活に深く関わってきました。1985年には、寂地川として名水百選に選ばれ、その水質の良さが証明されています。現在も、飲料水として利用されているほか、良質な水を利用したワサビ栽培も盛んです。

寂地峡の由来：伝説と寂地坊

寂地峡という地名は、古くから伝わる伝説に由来しています。昔、この川には人を悩ます大蛇が棲んでおり、木々をなぎ倒し、毒気を含んだ息で草花や作物を枯らしていました。そこに、寂地坊という旅の僧が現れ、祈祷によって大蛇を退治したと言われています。この寂地坊の名にちなんで、この峡谷は寂地峡と呼ばれるようになったと伝えられています。

アクセスと周辺情報

寂地峡へのアクセスは、錦川鉄道錦町駅から岩国市営錦バスを利用するのが便利です。「寂地登山口」行きに乗車し、「寂地峡入口」停留所で下車後、徒歩5分ほどで到着します。周辺には、山口県ならではの自然や文化に触れられる観光スポットも多く存在しており、寂地峡と合わせて楽しむことができます。

寂地峡は、自然の雄大さ、水の美しさ、そして歴史と伝説が織りなす魅力的な場所です。訪れる人々に、忘れられない感動とやすらぎを与えてくれるでしょう。

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