寂然

寂然（じゃくせん/じゃくねん）

寂然は、平安時代後期の文化人であり、僧侶、貴族、そして歌人として名を残しました。俗名は藤原頼業（ふじわら の よりなり）といい、藤原北家長良流に連なる家柄の出身です。父は丹後守を務めた藤原為忠で、その四男として生まれました。官位は従五位下・壱岐守にまで昇りました。

生涯

寂然は元永年間（1118年 - 1119年）に生まれたとされています。崇徳天皇の時代には、東宮・躰仁親王（後の近衛天皇）の蔵人や左近衛将監といった要職を歴任しました。康治元年（1141年）には従五位下に叙爵し、翌康治2年（1142年）には壱岐守に任ぜられています。

しかし、遅くとも久寿年間（1154年-1156年）には官位を捨て出家し、京都の大原に隠棲しました。法名を寂然と称し、同じく出家した兄弟の寂念・寂超と共に「大原三寂」あるいは「常盤三寂」と呼ばれました。隠棲後は、歌人としての活動に専念し、西行や西住といった同時代の歌人たちと親交を深めました。また、各地を旅し、讃岐国に流された崇徳院を訪問したことも知られています。寿永年間にはまだ健在であったようですが、晩年については詳しいことは分かっていません。

人物と業績

寂然は、和歌に優れた才能を発揮し、その作品は後世にまで高く評価されています。私撰集として『唯心房集』『寂然法師集』『法門百首』があり、勅撰和歌集である『千載和歌集』以下に47首もの歌が収録されています。彼の歌は、強い隠遁志向と深い信仰に裏打ちされた、閑寂で幽玄な境地を表現している点が特徴です。また、和歌だけでなく、当時流行した今様にも深く通じていたと伝えられています。

官歴

崇徳朝：東宮蔵人、左近衛将監
康治元年（1141年） 正月5日：従五位下
康治2年（1142年） 正月27日： 壱岐守
天養-久寿年間：出家

参考文献

* 井上宗雄「常磐三寂年譜考」『国文学研究 21』早稲田大学国文学会、1960年

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