韓国鉄道公社

韓国鉄道公社 (KORAIL) の概要

韓国鉄道公社（KORAIL、한국철도공사）は大韓民国における主要な鉄道運営会社です。2005年1月1日、旧鉄道庁の公社化によって設立され、大田広域市に本社を置いています。国家鉄道公団が所有する鉄道インフラを運営し、旅客・貨物列車の運行、高速鉄道KTX、広域電鉄、さらには鉄道博物館の運営まで幅広く事業を展開しています。略称は、2019年までは英語表記の「KORAIL（コレイル）」でしたが、現在はハングル表記の「韓国鉄道（한국철도）」を使用しています。

経営状況と課題

KORAILは、鉄道庁から事業を継承したものの、低廉な運賃政策と高騰する維持費のバランスが課題となっています。長らく赤字経営が続き、2013年には龍山開発事業の債務不履行による経営危機、更には2023年から2025年にかけて1兆2000億ウォン（約1330億円）を超える純損失が見込まれるなど、財政状況は厳しい状況です。2023年9月には、政府による改革案への反対から全国鉄道労働組合によるゼネストが発生するなど、労働組合との関係も重要な課題となっています。巨額の利子費用も経営を圧迫しており、政府による抜本的な改革が求められています。

組織と人員

KORAILは、6本部8室4段64処の本社組織と、12地域本部、20附属機関から成り立っています。従業員数は約2万8000名で、駅業務、乗務、車両整備、施設管理、電気設備管理、サポート部門などに分かれて業務に従事しています。また、理事会、監査委員会、社長、副社長といった経営陣と、各部門を統括する本部長、室長などが組織運営にあたっています。地域本部は、ソウルを含む首都圏、江原道、忠清道、全羅道、慶尚道などに設置され、各地の鉄道運営を担っています。さらに、車両整備団、情報通信事務所、研究院、人材開発院など、専門性の高い機関も設けられています。海外事業にも進出しており、フランスに駐在員事務所を置いています。

運行形態と列車の種類

KORAILは、高速鉄道KTX、広域電鉄、一般旅客列車を運行しています。KTXは京釜線、湖南線、全羅線を高速で結び、ITX-セマウル、ムグンファ号といった在来線特急・急行種別の列車も運行されています。一般旅客列車は、ムグンファ号が主要な列車種別で、日本の普通列車に相当する役割を果たしています。また、通勤列車は首都圏の一部路線で運行されています。広域電鉄は、ソウル首都圏や釜山近郊で通勤輸送を担い、急行・各駅停車が運行されています。さらに、観光列車としてV-train、S-train、A-train、G-trainなど、魅力的なテーマを持った列車も運行されています。これらの列車は、列車番号で案内されており、日本の列車名のような愛称は、列車種別によって区別されています。

施設と路線

KORAILは、2018年2月時点で679の駅を管理しています。駅は、有人駅である普通駅、簡易駅、無人駅に分類され、日本の駅分類と類似した体系を持っています。また、信号場や信号所なども含めて、総営業距離は約3918.5km、96路線に及びます。高速線、一般線、複線区間、電化区間と、鉄道網の状況も多様性に富んでいます。路線網は、京釜線、京義線、湖南線といった幹線から、地方路線まで幅広く展開し、韓国の広範囲をカバーしています。

車両

KORAILが保有する車両は、KTX、電気機関車、ディーゼル機関車、電車、気動車、客車など多岐に渡ります。KTX車両は、100000系（KTX-I）、150000系（KTX-イウム）など複数の系列があり、高速鉄道の運行を支えています。また、在来線用車両は、ムグンファ号で使用される200000系、ITX-セマウル用の210000系、ITX-マウム用の220000系など、近代的な車両が導入されています。機関車も、電気機関車とディーゼル機関車の両方が使用されており、貨物列車の牽引にも活躍しています。

その他

KORAILは、自動案内放送システムやICカード乗車券「レールプラス」などを導入し、利用客の利便性向上に努めています。しかし、かつては車内販売や食堂車が設置されていましたが、現在は廃止され、自動販売機が設置されているのみです。一部観光列車では軽食販売が行われています。

結論

KORAILは、韓国の鉄道輸送を支える重要なインフラであり、国民生活に不可欠な存在です。しかし、財政難や労働組合との対立、安全性の問題など、数多くの課題を抱えています。今後、政府の改革支援やKORAIL自身の経営努力によって、これらの課題がどのように解決されていくのか、注目が集まっています。

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