富士見ヶ丘検車区

富士見ヶ丘検車区

東京都杉並区、京王電鉄井の頭線の富士見ヶ丘駅と久我山駅の中間に広がるのが、井の頭線の車両を管理する富士見ヶ丘検車区です。ここは井の頭線に所属する車両の運行を支える重要な役割を担っており、夜間には多数の車両がここに留置されます。

沿革

富士見ヶ丘検車区は、井の頭線の車両保守体制の再編に伴い設立されました。その歴史は1966年4月16日に始まります。この日、それまで永福町駅の北側にあった永福町検車区が廃止され、現在の富士見ヶ丘・久我山間に新たな車両基地として富士見ヶ丘検車区が開設されました。旧永福町検車区の敷地は、その後京王バスの永福町営業所として活用されることになります。

さらに1970年4月1日には、永福町にあった工場機能も廃止され、富士見ヶ丘に車両工場が開設されました。これに合わせて、乗務員が所属する電車区（運転士）や車掌区（車掌）といった運転関係の組織も富士見ヶ丘に移転し、車両の保守・管理と運転部門が一つの拠点に集約される形となりました。

その後、1983年には業務組織の見直しが行われ、富士見ヶ丘工場は若葉台工場の一部門である富士見ヶ丘作業場と名称が変更されました。

構内施設

検車区の敷地内には、車両の検査や整備を行うための様々な施設が整えられています。

検査線: ピット構造を持つ検査線が2本あります。1本は日常的な列車検査に、もう1本は比較的短期で行われる月検査に使用されます。
洗浄設備: 車両の汚れを落とすための洗浄設備として、手作業による洗浄が可能な作業台を備えた洗浄線が1本と、自動で車両を洗浄する装置が1基設置されています。
留置線: 多くの車両を収容できるよう、留置線が多数設けられています。1本の線路に2編成を留置できる線が5本、1編成を留置できる線が10本あり、井の頭線の営業用車両全てを夜間滞泊させることが可能です。
工場線: 重要部検査や全般検査、あるいは車両のリニューアル工事など、より大規模な作業を行うための工場線が2本あります。それぞれ5両編成2本を同時に収容できる能力があります。
* 台車脱着場: 工場線に隣接して、車両から台車を取り外したり取り付けたりするための台車トラバーサーが1本あります。

検査体制と若葉台との連携

富士見ヶ丘検車区では、日常的な検査に加え、一部の重要部検査や全般検査も実施していますが、全ての機能を単独で持っているわけではありません。特に車輪の削正を行う設備はこの検車区内にはないため、車輪を削る必要がある場合は、車両から取り外した台車をトラックに乗せて若葉台検車区まで運び、そこで作業が行われています。

また、重要部検査や全般検査の際には、車体やパンタグラフといった一部を除き、多くの機器が車両から取り外されます。これらの機器はトラックで京王電鉄の主要工場である若葉台工場まで輸送され、そこで検査や整備が行われます。これらの検査作業の大部分は、京王重機整備というグループ会社によって担われており、富士見ヶ丘においても京王重機整備の担当員が常駐して作業にあたっています。

所属車両

2020年10月時点の情報によれば、富士見ヶ丘検車区には井の頭線で運用されている1000系電車が所属しています。具体的には、5両編成が29本、合計145両の1000系車両がこの基地を拠点として運用されています。

車両の搬入・搬出

新造された車両の受け入れや、役目を終えた車両の搬出は、全て道路を使って陸送で行われます。しかし、富士見ヶ丘検車区の周辺は道路が狭く、大型のトレーラーなどが作業する十分なスペースがありません。そのため、これらの作業は隣接する京王バス永福町営業所の敷地を利用して行われています。電車を搬入する際には、作業スペースを確保するために、永福町営業所に所属する一部のバス車両（主に中型車など）が一時的に富士見ヶ丘検車区付近のスペースへ移動させられることがしばしばあります。

将来計画との関連

この検車区の敷地の大部分は、杉並区で進められている都市計画上の高井戸公園の計画範囲に含まれています。ただし、現時点では、この敷地が直ちに公園整備の対象となる計画からは外れています。

参考文献

本稿の記述にあたっては、交通新聞社発行の『鉄道ダイヤ情報』2020年10月号に掲載されたシリーズ車両基地 Vol.74「京王電鉄 富士見ヶ丘検車区」を参照しています。

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