富安風生

富安風生について

富安 風生（とみやす ふうせい、1885年4月16日 - 1979年2月22日）は、日本の俳人として広く知られています。彼の本名は謙次で、主に温和で中道的な作風が特長です。愛知県出身の富安は、俳句の世界において多くの業績を残しました。

経歴

風生は愛知県八名郡金沢村に生まれ、豊橋町立豊橋尋常中学時習館、第一高等学校を経て東京帝国大学法科大学を卒業しました。大学卒業後は逓信省に就職し、逓信次官を務めるなど官界でのキャリアを積み重ねます。彼が俳句を始めたのは34歳の時で、福岡貯金支局の支局長として赴任した際に吉岡禅寺洞から指導を受け、その後に高浜虚子と出会いました。特に高浜虚子の影響で、俳句の作風が形成されていきました。

1928年には逓信省内の俳句雑誌「若葉」の選者となり、その後主宰者となりました。また、岸風三楼や菖蒲あや、清崎敏郎等、多くの若手俳人を育てるなど、俳句界に多大な影響を与えました。1936年には官界を辞し、句作に専念する生活を始めます。戦時中も文学者愛国大会に参加するなど、社会との関わりを大事にした活動が見られます。

戦後は電波監理委員会の委員長を務める一方、1971年には日本芸術院賞を受賞し、日本芸術院の会員に選ばれました。1979年に94歳でその生涯を閉じましたが、「若葉」の主宰は後に清崎敏郎に引き継がれました。

句作とその背景

富安風生の句風は、穏やかで中庸な表現であることが特徴的です。東大俳句会では、水原秋桜子や高野素十といった若手俳人たちに対し少し老成した印象を持たれていました。高浜虚子は彼の第一句集『草の花』の序において、彼の作品を「中正・温雅」とし、その叙述スタイルについて「穏健・妥当」と評価しました。特に、厳選された言葉で対象を描写し、わかりやすさを避けることでより広がりのある表現を生み出していると指摘されることもありました。

風生の代表的な句には「みちのくの伊達の郡の春田かな」や「まさをなる空よりしだれざくらかな」というものがあります。また、彼の軽妙な句「よろこべばしきりに落つる木の実かな」は有名で、この句を皮肉ったパロディも作られました。このように、彼の句は時にユーモアを交えつつ、日本の自然や情景を美しく描くことに重きを置いていました。

俳句の館風生庵

富安風生とゆかりのある「風生庵」という施設が山中湖村に存在しています。ここは、彼が長年避暑地として利用していた地にある古民家を移築したもので、内部には風生に関連する品々が展示されています。この施設は、彼の作風や業績を後世に伝えるための重要な拠点となっています。

栄典と著作

風生は1937年に正四位を受勲し、俳句界においても高く評価されました。彼の著作には多くの句集や俳句に関する書籍があり、『草の花』や『十三夜』などの句集が特に知られています。これらの著作は、彼の作品の中で彼の感性や思想を反映させる重要な資料となっています。

まとめ

富安風生は、文化活動に積極的に参画しながらも、俳句において確固たる地位を築いた俳人です。彼の温和な作風と高浜虚子との信頼関係は、今でも多くの俳人や愛好者に影響を与え続けています。

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