寒立馬

寒立馬（かんだちめ）

青森県下北郡東通村の尻屋崎周辺に生息する寒立馬は、厳しい冬の寒さにも耐え抜く強靭な馬です。そのルーツは南部馬にあり、短めの足とずんぐりとした体型が特徴的です。現在の姿になるまでには、ブルトン種などの外来種との交配が重ねられてきました。

歴史

江戸時代後期、下北地方の沿岸部では、南部馬を祖とする田名部馬が「四季置付」という盛岡藩の政策により、一年を通して放牧されていました。田名部馬は比較的小柄ながらも、寒さや粗食に強く、持久力に優れていました。藩政時代から昭和にかけて、軍用馬育成のため外来馬との交配が進み、より大型の体躯へと改良されました。

しかし、戦後の農業機械化に伴い、農耕馬や荷役馬の需要が減少。昭和35年（1960年）以降は、大型肉用馬であるブルトン種との交配が進められ、現在の寒立馬の姿へと改良されました。

特徴

寒立馬は、現在も尻屋崎周辺に放牧されており、観光道路を自由に歩き回る姿が見られます。寒さや粗食に耐え、持久力に富むため、かつては農用馬として重宝されていましたが、1995年（平成7年）にはわずか9頭にまで激減しました。その後、保護政策が進められた結果、現在は40頭ほどにまで回復しています。寒立馬およびその生息地は、青森県の天然記念物に指定されています。

かつては「野放馬」と呼ばれていましたが、昭和45年（1970年）に尻屋小中学校の岩佐勉校長が、年頭の書き初め会で「東雲に勇みいななく寒立馬 筑紫が原の嵐ものかは」と詠んだことがきっかけで、「寒立馬」と呼ばれるようになりました。「寒立」とは、カモシカが冬季に山地の高い場所で長時間雪の中に立ち尽くす様子を表すマタギ言葉で、冬に寒風が吹き荒れる尻屋崎の雪原でじっと立っている野放馬の姿が、その様子に似ていたことから名付けられました。

尻屋崎周辺は冬季に閉鎖され、寒立馬たちは「アタカ」と呼ばれる放牧地で厳しい冬を過ごします。

現状

寒立馬は農用馬であり、放牧地の許容頭数や近親交配による弱体化を防ぐため、青森県畜産農業協同組合連合会が主催する馬市場へ出陳される場合があります。東通村は寒立馬の所有者ではありません。

令和4年度からは、これまで尻屋牧野組合が担ってきた放牧を東通村が行うことになりました。それに伴い、令和4年度当初には、主に10歳以上の古馬が処分されたため、現存する個体数は10頭をわずかに超える程度となっています。

交通アクセス

むつ市中心部から青森県道6号を経由
下北バス尻屋線で約45分
下北駅からむつバスターミナルまで約50分、むつバスターミナルで尻屋線に乗り換え約1時間半
青森駅からむつバスターミナルまで約2時間半、むつバスターミナルで尻屋線に乗り換え約3時間

ギャラリー

[寒立馬の画像1]
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関連項目

日本在来馬
北海道和種：同じく南部馬を先祖とする馬
御崎馬：都井岬で周年放牧されている馬。国の天然記念物

外部リンク

あおもりの文化財「寒立馬とその生息地」 - 青森県
* 公益社団法人 日本馬事協会

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