寛朝

寛朝（かんちょう）

寛朝は、平安時代中期に活躍した真言宗の僧侶で、卓越した学識と人望で知られています。916年に生まれ、998年に亡くなりました。父は宇多天皇の皇子である敦実親王、母は藤原時平の娘という、高貴な血筋を受け継いでいます。幼少の頃より仏道に親しみ、926年に祖父である宇多法皇のもとで出家しました。

寛朝は、洛外の広沢池のほとりにあった遍照寺の住持を務めていたことから、「広沢僧正」や「遍照寺僧正」とも呼ばれていました。948年には、寛空から灌頂を受け、真言宗の僧としての修行を深めていきます。967年には仁和寺の別当に任じられ、977年には権律師、権少僧都、法務と順調に昇進。さらに、東寺三長者や西寺別当にも任命され、広沢房を御願寺とする別当にも補せられたため、その活躍ぶりは広く知れ渡りました。986年には、真言宗の僧としては初めて、そして日本で3番目となる大僧正に任命され、その地位を不動のものとしました。

円融天皇が受戒する際には戒和尚を務めるなど、天皇からの信任も厚く、989年には円融天皇の命により、広沢湖畔に遍照寺を建立し、密教興隆の中心としました。この時の供養の様子は、藤原実資の日記『小右記』にも記録されており、円融法皇をはじめ、多くの公卿が参列したことが記されています。寛朝は、密教の事相・教相に詳しく、『金剛界次第』や『不動次第』などの著作を残しました。また、声明にも精通しており、『理趣経』読誦の音調を整備するなど、東密声明中興の祖として、その名を歴史に刻んでいます。特に理趣経の韻調を整えるなど、声明の分野で大きな功績を残しました。

円融天皇は、寛朝を深く帰依し、御願寺である円融寺は、寛朝の私房があった場所に建立されました。当代一流の僧として、その名声は高く、多くの人々から尊敬を集めました。また、舞楽や管絃にも長け、音楽の才能も持ち合わせていました。さらに、怪力の持ち主でもあり、盗人を投げ飛ばしたという逸話も残っています。寛朝は、真言宗の声明を整理し、諸儀式における声明の次第を定め、声明学習の段階を設けるなど、真言声明を大成した功績は非常に大きいとされています。

940年に平将門が関東で反乱を起こした際には、自ら関東に下向して祈祷を行ったとされています。この時、祈祷した不動[[明王]]を本尊として創建されたのが、成田山新勝寺であるという説もあります。寛朝の墓は、京都市右京区の遍照寺山にあります。

寛朝は、高貴な身分でありながらも、仏道に励み、真言宗の発展に大きく貢献した僧侶でした。その学識、人望、才能は、後世に語り継がれています。

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