広沢池

広沢池（ひろさわのいけ）

広沢池は、京都市右京区嵯峨広沢町にある周囲約1.3kmの美しい池です。別名、遍照寺池（へんしょうじのいけ）とも呼ばれています。その文化的・景観的な価値から、1969年（昭和44年）に歴史的風土特別保存地区に指定され、2010年（平成22年）には農林水産省のため池百選にも選定されました。また、日本三沢の一つに数えられることもあります。

歴史

広沢池は、平安時代中期の989年（永祚元年）に寛朝僧正が朝原山の麓に遍照寺を建立する際、本堂の南に庭池として造営されたと伝えられています。これが別名「遍照寺池」の由来です。かつては観音堂、月見堂、釣殿などがあり、月見の景勝地として多くの人に親しまれました。嵯峨野一帯を開墾した秦氏が溜池として造ったという説もあります。

池の中央には、池へ突き出るような形の小さな人工島「観音島」があります。島へは橋が架けられており、内部には石像の千手観音が祀られています。島の先端には弁天堂もあります。

遍照寺の衰退とともに池も荒廃しましたが、明治時代中期に地元の有志によって中島（観音島）が再築されました。島内に安置されている総高160cmの十一面千手観音石像は、もとは音戸山（現、鳴滝音戸山町）にあった蓮華寺の石仏群から移されたものです。

夕顔 (源氏物語)のモデルになったともいわれる大顔（おおかお＝具平親王の妾妻）が、10世紀の後半に月見の最中に池畔で急死したという逸話も残っています。

歌・俳句に詠まれた広沢池

古来より観月の名所として知られる広沢池は、多くの歌や俳句に詠まれてきました。

古の人は汀に影絶えて 月のみ澄める広沢の池（源頼政）
やどしもつ月の光の大沢は いかにいつとも広沢の池（西行法師）
あれにける宿とて月はかわらねど 昔の影はなほぞこひしき（平忠度）
名月や池をめぐりて夜もすがら（松尾芭蕉）

自然

池の周囲にはサクラ、カエデ、ヤナギなどが植えられ、四季折々の美しい景観を楽しむことができます。マガモやケリなどの鳥類、トンボなども多く生息しており、地元の小学校の自然観察教室や写生教室にも利用されています。

周辺環境

広沢池の周辺には、以下のような名所・旧跡があります。

大覚寺: 広沢池の西約500mに位置し、嵯峨院跡大沢池庭園があります。
児神社: 広沢池の南西に鎮座し、遍照寺開山の僧・寛朝に仕えた稚児を祀っています。
遍照寺: 広沢池の南約300mに位置します。

風物詩

広沢池では、四季折々の風物詩を楽しむことができます。

春: 池の南堤周辺の桜が咲き誇ります。
秋: 周辺の山々が紅葉に染まります。
冬: 12月には池の水を抜き、コイを収穫する「鯉揚げ」という行事が行われます。

広沢池は時代劇のロケーション場所としても知られています。

広沢池は、歴史と自然が調和した、訪れる人々を魅了する場所です。ぜひ一度、その美しい景観を堪能してみてください。

もう一度検索