審食其

審食其（しん いき）

審食其は、中国、前漢時代の人物です。沛の出身で、生没年は不明ですが、紀元前177年に亡くなりました。

生涯

劉邦が沛公として独立した時、審食其は劉邦の父である劉太公の世話役として、劉邦の兄と共に太公に付けられました。紀元前205年、劉邦が項羽に敗れて逃走した際、呂雉（呂后）と劉太公は項羽の捕虜となりましたが、審食其は呂后らに従い、彼らを世話しました。その後、呂后らが劉邦の元へ戻ると、審食其も劉邦に従いました。

紀元前201年、審食其は辟陽侯に封じられました。紀元前199年に趙で高祖暗殺未遂事件が起こると、趙王の側室で高祖の寵愛を受けた女性も連座して獄に繋がれます。彼女の弟が審食其を通して呂后に助命を願いましたが、呂后は嫉妬からこれを取り上げず、審食其も強くは言いませんでした。その女性は劉長を産んだ後、自殺しました。

紀元前195年、燕王が反乱を企んでいるという情報を得た高祖は、審食其らを派遣して燕王を迎えさせようとしましたが、燕王は疑って応じませんでした。同年、高祖が亡くなると、呂后は審食其と「諸将は高祖と同じ民であったのに部下になっているため、内心穏やかではない。若い主に交代するのは、諸将を皆殺しにしない限り天下は不安定であろう」と謀りました。しかし、それを聞いた者が呂后を諫めたため、呂后は高祖の喪を発表しました。

紀元前188年、審食其は典客となり、翌年には左丞相となりました。しかし、彼は丞相でありながら宮殿内を監視し、官僚は皆彼を通して決裁を得るという状況でした。

紀元前180年、呂后が亡くなると、審食其は太傅となりました。呂氏一族が滅ぼされた後、再び丞相に任命されますが、文帝が即位する頃には罷免されました。

紀元前177年、淮南王となっていた劉長は、かつて自分の母を助けようとしなかった審食其を恨み、彼を殺害しました。審食其は幽侯と諡され、息子の審平が後を継ぎましたが、紀元前155年に謀反の罪で自殺しました。

審食其の生涯は、前漢初期の政治情勢、特に呂后の権勢と、それに伴う人々の思惑が複雑に絡み合っていた時代を象徴しています。

参考文献

『史記』巻7項羽本紀、巻8高祖本紀、巻9呂太后本紀、巻22漢興以来将相名臣年表、巻56陳丞相世家
『漢書』巻1高帝紀、巻3高后紀、巻16高恵高后文功臣表、巻19下百官公卿表下、巻44劉長伝

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