紀元前205年

紀元前205年は、古代世界において重要な転換期を迎えた年でした。各地域で政治的な変動や戦争が勃発し、勢力図が大きく塗り替えられようとしていました。

セレウコス朝

アンティオコス3世は、東方遠征を終え、ペルシア湾への遠征でゲラから貢納を受けました。バクトリア人やパルティア人を服属させ、メディア、ペルシア、アナトリアの支配者たちの反乱を鎮圧し、セレウコス朝の勢力を回復させました。これらの功績から、アンティオコス3世は「大王」の称号を与えられ、その威勢はアレキサンドロス大王になぞらえられるほどでした。

ギリシア

第一次マケドニア戦争の終結として、マケドニアのピリッポス5世はローマとフォエニケの和約を締結しました。これにより、マケドニアはイリュリアを獲得し優位に立ちましたが、ハンニバルとの同盟は事実上無効となりました。その後、スパルタ王ナビスがアカイア同盟と戦争を開始し、アカイアの将軍フィロポイメンがナビスをメッセネから追い払いました。フォエニケの和約により、東方への拡大が難しくなったピリッポス5世は、西のエーゲ海に関心を向け、大艦隊の建設を開始。ロードスを打倒する機会をうかがい、海賊たちと同盟を結びました。これがクレタ戦争の始まりとなり、マケドニアとロードス、ペルガモンなどの間で激しい戦いが繰り広げられました。

共和政ローマ

プブリウス・コルネリウス・スキピオは、元老院の反対を押し切り、ハンニバルのいるイタリアではなくカルタゴの北アフリカ拠点を攻撃することを決意し、志願兵を集めてシチリアへ渡りました。また、ローマの政務代行官キントゥス・プレミニウスは、カルタゴからロクリを奪還。スキピオは、今後の進攻に備えてガイウス・ラエリウスを北アフリカに派遣しました。一方、マゴ・バルカ率いるカルタゴ軍は、リグリアに上陸し、ジェノヴァとサヴォーナを占領。ハンニバルは、クロトナ近くの寺院に自らの功績を記した石碑を建てました。

エジプト

エジプトでは、土着のエジプト人がギリシア人支配者に対して反乱を起こし、その動きは上エジプトにまで拡大。プトレマイオス4世が死去し、5歳の息子プトレマイオス5世が王位を継承しましたが、王の死は公表されませんでした。

中国

中国では、田栄が自立して斉王となり、項羽が大軍を率いて斉を征伐しました。田栄は敗れて殺害され、項羽は斉王建の弟である田假を擁立。しかし、田假もすぐに田栄の弟である田横に倒され、楚国に逃亡したものの、項羽によって殺害されました。また、漢軍は彭城の戦いで楚軍に大敗し、劉邦の家族が捕虜となるなど、大きな打撃を受けました。関中では大飢饉が発生し、人々が飢えに苦しみました。劉邦は韓地を得て、韓王信を韓王に任命しました。

紀元前205年は、各地で権力闘争が激化し、新たな時代の幕開けを予感させるような、変動の年であったと言えるでしょう。

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