寺田達志

寺田達志：日本の環境行政を牽引した官僚

寺田達志氏は、1953年生まれの日本の官僚であり、環境省において地球環境局長や地球環境審議官などの要職を歴任しました。一橋大学社会学部を卒業後、1976年に環境庁に入庁し、以来、日本の環境行政の発展に大きく貢献しました。

環境アセスメント制度の確立

寺田氏は、環境庁入庁後、環境影響評価課に配属され、環境アセスメント制度の確立に尽力しました。1997年に公布された環境影響評価法は、寺田氏が中心となって立案から施行まで携わったものであり、その後の日本の環境政策に大きな影響を与えました。また、公害健康被害の補償等に関する法律の改正や、京都議定書の批准作業、石綿による健康被害の救済に関する法律の法案策定など、多岐にわたる環境問題に取り組んでいます。

名古屋港藤前干潟の保全

1998年、名古屋港の藤前干潟の埋め立て計画が問題となった際には、環境影響評価課長として、その計画に断固として反対しました。当時、諫早湾干拓事業への介入を怠った環境庁への批判が高まっていたこともあり、寺田氏は、藤前干潟の埋め立てが前例となれば、他の地域の干潟の埋め立てを止めることが難しくなると考えました。そのため、名古屋市に対し、埋め立て計画を全面的に否定する報告書を提出し、自ら名古屋市役所を訪問して計画の中止を強く求めました。その結果、名古屋市の埋め立て計画は中止され、藤前干潟は保全されることとなりました。この出来事は、環境保護に対する寺田氏の強い信念を示すものとして、広く知られています。

地球温暖化問題への取り組み

寺田氏は、地球温暖化問題にも積極的に取り組みました。2004年には、東京大学公共政策大学院で地球温暖化に関する講義を行い、問題の重要性を訴えました。また、環境省では、水・大気環境局水環境担当審議官、地球環境局長、地球環境審議官を歴任し、地球温暖化対策の推進に尽力しました。東アジアサミット環境大臣会合では、共同議長として、環境的に持続可能な都市に関するハイレベルセミナーで挨拶するなど、国際的な協力も積極的に行っていました。

退官後の活動と瑞宝重光章受章

2012年に環境省を退官後は、環境省参与として、水俣病被害者やアスベスト問題被害者対策を担当しました。2013年から2016年までは、駐ケニア特命全権大使兼国連環境計画常駐代表、国連人間居住計画常駐代表として、国際的な環境問題や開発問題に取り組みました。2024年には、長年の環境行政への貢献が認められ、瑞宝重光章を受章しました。

著作活動

寺田氏は、環境問題に関する著作活動も積極的に行っています。著書には、『わかりやすい環境アセスメント』（東京環境工科学園出版部、1999年）があり、環境アセスメントの重要性をわかりやすく解説しています。また、論文も多数発表しており、環境問題に関する知見を広く社会に提供しています。

寺田達志氏の略歴

1953年：東京都出身
1971年：東京都立武蔵高等学校卒業
1976年：一橋大学社会学部卒業、環境庁入庁
1992年：環境庁長官秘書官
1995年：環境庁長官官房総務課環境情報企画官
1994年：環境庁企画調整局環境影響評価課環境影響審査室長
1997年：環境庁企画調整局環境影響評価課長
2000年：環境庁企画調整局環境保健部保健企画課長
2001年：環境省地球環境局総務課長
2002年：環境省大臣官房秘書課長
2004年：環境省大臣官房審議官
2006年：環境省水・大気環境局水環境担当審議官併任
2007年：イースト・ウエスト・センター派遣（環境省大臣官房付）
2008年：環境省地球環境局長
2011年：地球環境審議官
2012年：退官、環境省参与
2013年：特命全権大使ケニア兼エリトリア、セーシェル、ソマリア、ブルンジ駐箚、国際連合環境計画常駐代表、国際連合人間居住計画常駐代表
2016年：辞職、一般社団法人日本環境アセスメント協会参与

寺田達志氏は、日本の環境行政の発展に大きく貢献した人物であり、その功績は高く評価されています。

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