寿 (エンジン)

寿（ことぶき）エンジンの概要

寿（ことぶき）は、日本の中島飛行機が製造した空冷星型航空機用のレシプロエンジンです。これは海軍での呼称で、陸軍ではハ1として知られています。また、性能向上型にはハ24という名称が付けられました。このエンジンは単列9気筒で、バルブ駆動方式はOHV（オーバーヘッドバルブ）を採用しています。

設計の背景

寿エンジンの設計は、かつてイギリスが開発したブリストルのジュピターエンジンを参考にしており、中島飛行機はそのライセンスを取得していました。そのため、ジュピターエンジンと比較されることが多いですが、寿の構造にはいくつかの相違点があり、特にストロークが160mmである点が特徴的です。また、アメリカのプラット・アンド・ホイットニー社のワスプエンジンの影響も受けているとされています。このような背景から、寿エンジンが「じゅ」という名前を冠されたのはジュピターとの関連性を示すものとも言われています。

開発の経緯

寿の開発は1929年（昭和4年）に始まり、社内での略称はNAHでした。開発当初はジュピターと混同されることが多くありましたが、寿自身の独自性も明確にあります。1931年には「寿一型」と「寿二型」が制式採用され、更なる改良型が続々と登場しています。具体的には、1934年に登場した「寿二型改一」、1937年には「寿二型改二」、「寿二型改三」が採用されました。

特に「寿三型」については、旧称の寿三型と制式に採用された寿三型が存在するため、識別が難しい時期もありました。その後の寿五型はボア146mm、ストローク160mmの9気筒エンジンとして設計が行われ、1931年の設計開始から翌年には試作機が完成しますが、性能面での課題から量産には至りませんでした。

陸軍における呼称

陸軍では、寿エンジンに対しても独自の呼称がつけられています。二型改一は「ハ24」、三型は「ハ1甲」、四一型は「ハ1乙」、五型は「九四式四五〇馬力発動機」として命名されています。このように、寿エンジンはさまざまな呼称で知られ、総生産数は家の力で約7,000台に達しました。

寿二型の主要諸元

次に、寿二型の主要なスペックについて以下にまとめます。

• - タイプ: 空冷星型9気筒
• - ボア×ストローク: 146mm × 160mm
• - 排気量: 24.1L
• - 全長: 1,021mm
• - 直径: 1,280mm
• - 乾燥重量: 350kg
• - 過給機: 機械式1段1速
• - 燃料供給方式: キャブレター式
• - 離昇馬力: 600HP / 2,300RPM
• - 公称馬力: 500HP / 2,100RPM（高度2,500m）

寿エンジンはその性能水準の高さから、三式艦上戦闘機や九〇式艦上戦闘機など数多くの航空機に搭載され、重要な役割を果たしてきました。また、九五式水上偵察機や中島AT-2輸送機など、さまざまな航空機に幅広く対応できる柔軟性も持っています。

まとめ

寿エンジンは、その設計と性能により日本の航空機産業における重要な存在となりました。特に海軍および陸軍による採用により、第二次世界大戦に向けた航空戦力の向上に寄与したことは大きな意義があり、航空用エンジンの歴史においても重要な位置を占めています。

もう一度検索