小マールキヤ経

小マールキヤ経の概要

小マールキヤ経（しょうマールキヤきょう、巴: Cūḷamālukya-sutta）は、パーリ仏典の経蔵に含まれる第63経です。この経典はしばしば『摩羅迦小経』や『箭喩経』とも呼ばれています。また、中国語に翻訳された類似の経典としては、『中阿含経』の第221経や『箭喩経』が存在します。

主要な登場人物

釈迦 - 仏教の創始者であり、教えを説く存在。
マールキヤプッタ - 比丘で、本経典の問者。

場面設定

本経典は、釈迦がコーサラ国のサーヴァッティーに所在するアナータピンディカ園（祇園精舎）で過ごしている時に展開します。ここに比丘マールキヤプッタが訪れ、彼の心の中に湧き上がる多くの疑問を釈迦に問いかけます。

マールキヤプッタの問い

マールキヤプッタは、世界の本質や生命の意味、修行完成者（如来）の死後について複数の疑問を持っています。具体的には、世界は永遠か、有限か、無限か、生命と身体の関係など、深い問いを持つ彼は、これらの疑問について釈迦の答えがあれば修行を続け、答えがなければ修行を放棄しようと考えています。

釈迦の教えと毒矢のたとえ

釈迦はマールキヤプッタの問いに対し、まずどのような関心からその修行を始めたのかを尋ねます。これにより、彼の期待とその疑問の形式について反省させるのです。釈迦は「毒矢のたとえ」を用いて、修行者は果たして重要な教えから逸れて、無意味な質問に時間を割くべきなのかと問いかけます。彼は、もしもそのような疑問に答えることを待っているうちに寿命を迎えることになったら、それは非常に無駄なことであると説きます。

実在と無常、苦の緩和

釈迦は続けて、「生老死、悲しみや苦しみは実際に存在し、それらを克服することこそが重要である」と教えます。彼は、疑問の内容は修行にとって役立たないものであり、必要な情報を提供することが不適切であると明言します。一方で、四諦（四聖諦）に関する教えがどれほど重要かということを示し、この教えによって厭離・離欲・滅尽・寂静・智通・正覚・涅槃へと至る道を示します。

マールキヤプッタの歓喜

この教えに感銘を受けたマールキヤプッタは、釈迦の教えを信受し、修行を続ける意志を固めます。彼にとって、釈迦の教えは無意味な疑問に対する答えではなく、実践すべき生き方を示すものであったのです。この教えは、現代においても多くの人々にインスピレーションを与え、自己の苦から解放される方法を示しています。

解釈の注意点

近年では、釈迦が来世について沈黙しているとする解釈もありますが、これは必ずしも正しいとは言えません。釈迦の教えは、問いの本質を理解し、有意義な実践を追求することに重きを置いていたのです。佐々木閑によると、釈迦はこの世を一切皆苦と捉え、輪廻を断ち切ることで涅槃に至ることを最も大切視していました。

まとめ

小マールキヤ経は、無駄な疑問にとらわれず、実際に重要な教えをしっかりと理解し実践することの大切さを教えています。この経典は、釈迦の教えが持つ深い哲理を提示し、苦の解消に向かう自己の道を示しているのです。

もう一度検索