小人 (中国の伝説)

小人（しょうじん）：伝説の中の小さな人々

小人とは、中国の古代文献に記述が見られる伝説上の人種です。靖人（せいじん）や短人（たんじん）、鶴国（かくこく）とも呼ばれ、東の海の彼方にある島に住んでいると伝えられています。

小人の記述

古代中国の地理書『山海経』には、東の果ての小人国は靖人とも呼ばれると記されています。また、『三才図会』によれば、小人たちは海中の島に住み、ツルのような鳥に捕食される危険があるため、常に群れをなして行動するとされています。

日本の『和漢三才図会』や奈良絵本『異国物語』にもその記述が見られ、小人の絵にはツルなどの鳥類が一緒に描かれることが多いです。『神異経』には、鶴国の人々は海鳥に食べられる危険があるものの、寿命は300年ほどあり、鳥の体内でも生き続けると記されています。小人たちは手先が器用で、古代中国の帝・堯に矢を献上したという記述も『竹書紀年』に見られます。

日本でも、これらの中国の書物を通じて小人国の存在が知られており、「こびと」という呼称で、海を隔てた小人島に住むとされています。

その他の小人

菌人（きんじん）: 『山海経』には、菌人という小人が住んでいると記されています。
焦僥人（しょうぎょうじん）/周饒（しゅうじょう）: 同じく『山海経』に登場する小人で、強風に飛ばされないよう身を伏せてやり過ごすとされています。
広延人（こうえんじん）: 『拾遺記』に記述が見られる小人です。
巨霊（きょれい）: 『漢武故事』に登場する、身の丈7寸の小人です。

小人の登場する作品

小人は、様々な物語や絵画の題材としても取り上げられています。

『鏡花縁』: 旅の舞台として小人国が登場し、鳥に襲われないよう常に群れで行動する様子や、人間とは反対の受け答えをする様子が描かれています。
富川吟雪『朝比奈島渡』: 朝比奈三郎がたどり着く異国の一つとして「小人じま」が登場します。
葛飾北斎『北斎漫画』: 「小人」と書いて「こびと」と読ませています。
歌川国芳『朝比奈諸国廻り図』: 朝比奈三郎が出会った異国人物の中に、小人国の住人が描かれています。

小人の伝説は、異文化への想像力や、小さき者への視点を私たちに与えてくれます。

参考文献

寺島良安 『和漢三才図会』3、島田勇雄・竹島純夫・樋口元巳訳注、平凡社〈東洋文庫〉、1986年、351頁。
『山海経 中国古代の神話世界』高馬三良 訳 平凡社〈平凡社ライブラリー〉、1994年、149頁。ISBN 4-582-76034-1。

関連項目

侏儒国：邪馬台国の南方にあると考えられていた小人の国。
小人 (伝説の生物)
ガリヴァー旅行記：小人たちの国「リリパット国」が登場する。
長人
* ピュグマイオイ：ギリシャ神話に登場する小人で、鶴が天敵という共通点がある。

もう一度検索