小学 (朱熹)

『小学』の概要

『小学』（しょうがく）は、南宋時代の儒学者・朱熹が幼い初学者向けの教育教材として企画した文書です。彼は劉清之を編纂者としてこの文献の作成を託け、その成果は過去の古典からの知恵をまとめたものとなっています。

この文献の割合や朱熹と劉清之の関与の程度については様々な見方がありますが、現代に伝わる『小学』は、内篇と外篇の合計6篇から構成されています。その編纂は淳熙14年（1187年）に完了し、朱熹による題詞韻語（いわゆる「小学題詞」）を含んでいます。

構成内容

内篇は「立教」「明倫」「敬身」「稽古」の4篇で、経書や秦代以前の文献に基づいています。一方、外篇は「嘉言」「善行」の2篇で、漢代以降の文献を参照しています。内容には、酒掃（清掃）、応対、進退の作法、修身や道徳に関する格言、忠臣や孝子の事績などが含まれ、これらは主に四書をはじめとする古典からの抜粋です。

成立の経緯

なぜ朱熹が劉清之に『小学』の編纂を依頼したのか、その動機や背景は明確ではありませんが、淳熙10年（1183年）に朱熹が劉清之に宛てた書状に、この件に触れている部分があります。劉清之は淳熙11年（1184年）ごろに鄂州で『小学』を初めて出版し、それが「鄂州本」と呼ばれました。朱熹はこれを受け取った後、一部当内容を簡略化したり、新たに情報を追加し、最終的に淳熙14年に武夷精舎で「武夷精舎小学之書」として再出版しました。

ここで注目すべきは、朱熹が『大学』に対して『小学』を位置づけ、前段階として8歳からの教育に利用すべきとした点です。このように『小学』は、もともと朱熹の作品とされて主に広く認識されてきましたが、17世紀以降には劉清之の編集物として再評価される動きもありました。

江戸時代の日本における『小学』

日本の江戸時代においては、『小学』は山崎闇斎によって朝鮮儒学の影響を受け、訓点が施されるなどして研究されました。しかし、一般的には素読を通じて漢籍の初歩的な学習教材として広まりました。昌平坂学問所や藩校、そのほか庶民の寺子屋などでも利用され、多くの初学者たちに親しまれてきました。

訳書

『小学』の受容は、江戸時代を超えても継続しており、さまざまな形で広まっていきました。たとえば、1965年に発行された『小学 新釈漢文大系3』がその一例です。

参考文献

• - 松野敏之「朱熹『小学』編纂考 - 劉清之小学書からの改修に関して」『論叢アジアの文化と思想』第13巻、2004年。

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