小島正雄

小島 正雄（こじま まさお）

日本の音楽史、そしてメディア史において、ジャズ演奏家、音楽評論家、さらには人気司会者として多方面で活躍した人物、それが小島正雄です。愛称は「チャーさん」。大正2年（1913年）3月4日に東京で生を受け、昭和43年（1968年）1月20日に54歳でこの世を去るまで、日本のエンターテインメント界に確かな足跡を残しました。

生涯とキャリア

東京に生まれた小島正雄は、早稲田大学在学中から音楽への情熱を燃やしていました。特にトランペット演奏に優れ、音楽家の服部正が当時設立した楽団「コンセール・ポピュレール」（後に青年日本交響楽団と改称）にトランペット奏者として参加。学生時代からプロの音楽家としての片鱗を見せていました。

大学卒業後、1941年には日本放送協会（NHK）に入局します。しかし、翌年には応召し、戦時中は軍務に就きました。終戦を迎えた後、1947年に復員。戦前の活動を経て再編成された名門ジャズバンド、「ブルーコーツ」に加わり、そのバンドマスターとして精力的に活動を展開。その演奏とリーダーシップで、戦後日本のジャズシーンを盛り上げました。

コーラスグループの育成

小島正雄の功績は、自身の演奏活動に留まりませんでした。彼は日本のポピュラー音楽界において、後進の育成にも多大な貢献をしています。特に、当時人気を博した多くのコーラスグループの指導にあたりました。日本の音楽史に名を刻む「ダークダックス」、「ボニージャックス」、「スリー・グレイセス」といった著名なグループは、彼の指導のもと成長し、世に送り出されたのです。彼らは小島を「育ての親」と慕いました。

メディアでの活躍

ブルーコーツでの成功と並行して、小島正雄はメディアの世界でもその才能を発揮し始めます。ラジオ番組のパーソナリティやテレビ番組の司会者として、全国的な人気を博しました。文化放送で放送された「9500万人のポピュラーリクエスト」や、TBSラジオの「味の素ミュージックレストラン」、「オーナー（水・木）」、そして1966年には大橋巨泉と共にパーソナリティを務めた文化放送の「大学対抗バンド合戦」など、多くの人気ラジオ番組でその軽妙な語り口で聴取者を楽しませました。

テレビの世界でも、日本テレビの「シャボン玉ホリデー」や「11PM」といった番組に出演。音楽番組から情報バラエティまで幅広くこなし、お茶の間でも親しまれる存在となっていきました。

舞台人としての哲学

プロの舞台人として、小島正雄は独自の哲学を持っていました。特に、舞台上でプロとして出演している者同士が、観客の前で互いを「さん付け」で呼び合うことに対し、「ギャラをもらっているプロがお客様の前でそのような態度をとるのは失礼にあたる」と考えていたとされます。この舞台上の美学は、共に仕事をした大橋巨泉にも受け継がれ、後の世代に影響を与えました。

突然の旅立ち

日本の音楽界、メディア界で脂が乗り切っていた小島正雄でしたが、昭和43年（1968年）1月、突然病に倒れます。心筋梗塞のため急逝。54歳というあまりにも早い旅立ちでした。

ジャズ演奏家、そしてバンドリーダーとして、また多くのスターコーラスグループを育てたプロデューサーとして、さらにラジオ・テレビの司会者として、小島正雄が日本のエンターテインメント界に残した功績は計り知れません。短い生涯ながら、その多才ぶりと影響力は、今なお語り継がれています。

もう一度検索