小川欽也

小川欽也：日本映画界の異才、その軌跡と作品群

小川欽也（おがわ きんや、1934年12月28日 - ）は、日本の映画界において、監督、脚本家、俳優、プロデューサーとして多岐にわたる才能を発揮してきた人物です。特に成人映画の分野では、黎明期から現在に至るまで作品を発表し続け、その数は400本を超えるという驚異的な記録を持っています。監督としての別名義に三川和久、小川卓寛、小川和久、上田光生、俳優としては姿良三、脚本家としては水谷一二三の名を用いています。

生い立ちと映画界入り

1934年、京都に生まれた小川は、幼少の頃から歌舞伎や映画に親しんで育ちました。父は歌舞伎役者、叔父にも映画俳優がいるという芸能一家の環境が、彼の映画への情熱を育んだと言えるでしょう。東京都立三田高等学校を経て中央大学経済学部に進学しましたが、卒業後すぐに映画界へ飛び込みます。

当初はフリーランスの助監督として、数々の映画製作現場を経験しました。連合映画、富士映画、京都映画といった製作会社を渡り歩き、山本弘之、田口哲、渡辺祐介、近江俊郎、小林悟、曲谷守平、渡辺邦男、小森白、井田探といった監督たちの下で、映画製作の基礎を学びました。この時期には、連続テレビ映画のパイロット版を監督するなど、その才能の片鱗を覗かせています。

成人映画の世界へ

1962年、大蔵映画に入社した小川は、チーフ助監督として、小林悟監督を支えつつ、自らも監督としてデビューしました。1964年には、牧和子主演の『妾』で劇場用映画監督デビューを果たします。この作品は「初のパートカラーを採用した日本映画」と評され、松井康子のピンク映画デビュー作としても注目されました。

その後、大蔵映画は低予算の成人映画製作に本格的に参入し、小川は『雌 めす 牝』を監督。この作品が大ヒットしたことをきっかけに、小川は成人映画界を代表する監督の一人となっていきます。以降、数々の作品を手掛け、美矢かほるなど、多くの女優を輩出しました。田中純一郎は『日本映画発達史』の中で、成人映画黎明期を代表する脚本家・監督として、小川の名を挙げています。

1968年には、日活配給の成人映画『秘帳 女浮世草紙』の構成を担当。1971年には日活ロマンポルノ開始後、三条まゆみ主演の『私は襲われたい!』を監督するなど、様々な形で成人映画に関わってきました。

多様な名義と作品群

小川は、監督として複数の名義を使用していたことでも知られています。小川卓寛、小川和久といった名義を使い分け、作品のジャンルやテーマによって、使い分けていたと考えられます。また、脚本家としては水谷一二三の名で多くの作品を手がけ、その多才ぶりを発揮しました。

小川の作品は、その多くが低予算で製作されましたが、その中には、独特のユーモアやエロティシズム、そして時代を反映した社会風俗が描かれています。初期作品は、再評価の動きも出ており、映画祭や特集上映で上映される機会も増えています。

現役監督としての活躍

2004年以降は、再び「小川欽也」名義に戻り、現在も精力的に作品を発表し続けています。2013年には、舞原美咲主演の『乱宴の宿 湯けむり未亡人』を監督。2020年には『女ざかり 白く濡れた太股』が公開予定でしたが、新型コロナウイルス感染対策のため延期となりました。80歳を超えてもなお、映画製作への情熱を燃やし続ける小川の姿は、多くの映画ファンを魅了しています。

小川欽也は、日本映画史において、特異な位置を占める映画作家です。その作品は、単なる成人映画としてだけでなく、時代を映す鏡、そして人間という存在を深く見つめた作品としても評価されるべきでしょう。

主な作品

妾（1964年）
雌 めす 牝（1965年）
痴情の密漁（1965年）
女王蜂の欲情（1966年）
禁じられた乳房（1966年）
生首情痴事件（1967年）
私は襲われたい！（1979年）
乱宴の宿 湯けむり未亡人 (2013年)

関連事項

大蔵映画
国映

外部リンク

Kinya Ogawa - IMDb（英語）
小川欽也 - KINENOTE
小川欽也 - allcinema
姿良二 - allcinema
小川欽也 - 日本映画データベース
上田光生 - 日本映画データベース
小川欽也、小川和久、上田光生、水谷一二三、姿良三 - 東京国立近代美術館フィルムセンター
小川欽也 - 文化庁日本映画情報システム
小川和久 - 文化庁日本映画情報システム
水谷一二三 - 文化庁日本映画情報システム
姿良三 - 文化庁日本映画情報システム
三川和夫 - 文化庁日本映画情報システム
姿良二 - 文化庁日本映画情報システム
小川卓寛 - 文化庁日本映画情報システム
* 小川欽也 - テレビドラマデータベース

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