小幡酉吉

小幡酉吉：日本の近代外交を彩った外交官の生涯

小幡酉吉（おばた ゆうきち、1873年 - 1947年）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の外交官です。石川県に生まれ、東京帝国大学法科大学法律学科を卒業後、警視総監官房に短期間勤務したのち、外交官及領事官試験に合格して外務省に入省しました。

彼の外交官としてのキャリアは、1898年の天津領事官補着任から始まります。その後、シンガポール、オーストリア＝ハンガリー帝国、イギリスなど、様々な国で勤務経験を積み重ねました。1905年には中国に転勤し、芝罘領事、天津総領事などを歴任。天津では、柔術家の野口清らが設立した天津武術會の副会長も務めるなど、多様な活動に携わっていました。

1916年に帰国後は、外務省政務局長などを務めた後、1918年から1923年にかけて再び中国へ赴任。特命全権公使として、山東懸案解決に関する条約に基づく共同委員会や日支通信問題交渉など、重要な外交問題に深く関わりました。

1925年には特命全権大使としてトルコへ赴任。1929年には中国駐在大使への指名を受けましたが、中国側のアグレマンが得られず、実現しませんでした。同年、中国駐在公使佐分利貞男の急死を受けて後任に指名されたものの、これも中国側によって拒否されています。その後、1930年にはドイツ駐在大使に任命され、ラトビアの駐在も兼務しました。1933年に退任、依願退官しました。

外交官としてのキャリアを終えた後も、小幡の活躍は続きます。1934年から1940年までは貴族院議員を務め、その後は枢密顧問官として、1947年の制度廃止まで貢献しました。同年8月9日に死去。その功績は、葬儀当日に死亡届が出されたにもかかわらず、天皇からの勅使の差遣がないという異例の形で認められました。

小幡酉吉の外交官としての経歴は、日本の近代外交史において重要な位置を占めています。特に、中国との外交関係においては、複雑な情勢の中、重要な役割を果たしました。彼の外交手腕と経験は、現代においても学ぶべき点が多いと言えるでしょう。

彼の栄典や勲章は、その功績を物語っています。従七位から従二位まで昇叙され、旭日大綬章など数々の勲章を受章。さらに、中国や満州国からも勲章を授与されています。これらの栄典は、彼がいかに日本の外交において重要な役割を担っていたかを証明しています。

また、小幡の家族も、日本の歴史に名を刻んでいます。彼の父である小幡和平は、加賀藩の軍艦奉行などを務めた人物であり、金沢国立第十二銀行（現・北陸銀行）の初代頭取も務めています。蔵書家としても知られ、その蔵書は石川県立図書館に小幡文庫として保存されています。兄の小幡文三郞も海軍技師として活躍しました。妻のみづゑは、男爵武井守正の六女でした。

小幡酉吉の生涯は、日本の近代外交史、そして日本の近代史を理解する上で重要な手がかりを与えてくれます。彼の経験、功績、そして家族の歴史を紐解くことで、日本の近代社会の多様な側面が見えてくるでしょう。

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