小机城

小机城（こづくえじょう）

小机城は、現在の神奈川県横浜市港北区小机町にあった日本の城（平山城）です。その跡地は「小机城址」として神奈川県の特別緑地保全地区に指定され、周辺は市民の森として整備されています。

歴史

戦国時代

小机城は、永享の乱（1438年 - 1439年）の頃に関東管領上杉氏によって築城されたとされていますが、正確な築城年代は不明です。

歴史に登場するのは、長尾景春の乱（1478年）での攻防戦です。山内上杉家の家宰であった長尾景春が、家督相続に不満を持ち反乱を起こし、小机城は景春の味方をしたため、太田道灌の攻撃を受けました。道灌は、近くの集落の松の大木の下で「小机はまず手習いの初めにて、いろはにほへとちりぢりとなる」と歌を詠んで味方を鼓舞し、鶴見川対岸の亀の甲山に陣を構え、約2か月かけて落城させたと伝えられています。道灌が歌を詠んだ松は「硯松」と呼ばれ、石碑とともに残っています。

その後、小机城は一時廃城となりましたが、後北条氏の勢力下に入ると、北条氏綱によって修復され、家臣の笠原信為が城主として配置されました。笠原氏は、小机城を中心に城下の整備に尽力し、寺を建立するなどしました。その後、城主は北条氏堯、北条氏政の弟、北条氏光と替わりました。1590年（天正18年）の豊臣秀吉による小田原征伐の際、小机城は無傷のまま落城し、徳川家康の関東入府の際に廃城となりました。

近現代

城跡は地元の人々に「城山」と呼ばれ、1892年（明治25年）には、周辺の村が合併して「城郷村」と名付けられました。城郷村の名は、1927年（昭和2年）に横浜市に編入されるまで使われ、編入後も学校名などに残っています。

2017年（平成29年）4月6日、「続日本100名城」（125番）に選定されました。

現状

小机城の跡は小机城址市民の森として整備されていますが、史跡指定はされていません。主要な二つの郭とその間の細い郭が残されており、一部では発掘調査も行われています。

現在「本丸」とされている西側の郭では、野球などが行われており、遺構が傷んでいる箇所もあります。「本丸」の西側の一部は、第三京浜道路の建設の際に分断され、破壊されました。また、西側の尾根続きにも城跡が続いていましたが、地下に横浜線の城山トンネルが貫通し、その上の遺構が大きく破壊されてしまいました。第三京浜道路を挟んだ郭の側には堀切の痕跡がありますが、それより先の場所は宅地開発が進み、遺構は確認できません。

主郭論争と登城路

主要な二つの郭のうち、どちらが主郭であったかは不明です。現在の表示では、西側の郭を「本丸」としていますが、研究者によっては東側の郭を主郭とする説もあります。登城路は、主に4つが挙げられています。

周辺

小机城の周辺には、合戦で亡くなった兵士を供養した塚や、太田道灌が残兵を処刑した場所など、歴史にまつわる地名が残っています。

参考文献

西村和夫 著「小机城」、西股総生 編『東国の中世城郭』中世城郭研究会〈中世城郭研究別冊〉、2010年、78-79頁。
八巻孝夫「小机城の考察（上） : 縄張の研究史及び城の歴史と構造を考える」『中世城郭研究』第33号、中世城郭研究会、2019年、88-116頁。
八巻孝夫「小机城の考察（下） : 縄張の研究史及び城の歴史と構造を考える」『中世城郭研究』第34号、中世城郭研究会、2020年、88-116頁。
横浜市教育委員会『横浜市港北区 小机城跡 : 令和３・４年度小机城跡埋蔵文化財試掘調査報告書』公益財団法人 横浜市ふるさと歴史財団〈横浜市教育委員会埋蔵文化財調査報告書 1〉、2024年3月。

関連情報

小机城址市民の森（横浜市環境創造局）
続日本100名城

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