小林武史 (ヴァイオリニスト)

小林武史は、1931年2月11日に生まれ、日本のヴァイオリニストとして国際的に活躍しました。幼少期をインドネシア・スマトラ島で過ごし、1941年に鈴木鎮一に師事し、ヴァイオリンの研鑽を積みました。彼の才能は早くから開花し、1949年には第18回毎日音楽コンクールヴァイオリン部門で第1位を獲得しました。

1953年には、ハチャトゥリアンのヴァイオリンコンチェルトを日本で初めて演奏し、その卓越した演奏技術と音楽性が高く評価されました。1955年には東京交響楽団のコンサートマスターに就任し、その後も1961年にブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団、1964年にはオーストリアのリンツ・ブルックナー管弦楽団、1967年には読売日本交響楽団と、国内外の著名なオーケストラでコンサートマスターを歴任しました。

小林は、演奏活動に加えて、現代音楽の紹介にも力を入れました。1969年にはショスタコーヴィチのヴァイオリンコンチェルト第2番、1979年には伊福部昭のヴァイオリン協奏曲第2番をそれぞれ日本初演、世界初演し、1983年には團伊玖磨のファンタジアをチェコスロバキア・ブルノ市国際音楽祭にて世界初演するなど、意欲的な活動を展開しました。

1988年度には第43回文化庁芸術祭賞（音楽部門）を受賞し、1996年度には同賞（音楽部門大賞）を受賞するなど、その功績は高く評価されています。また、国際交流基金文化使節としても活躍し、特にベネズエラでのスズキ・メソードに基づいた教育活動は、同国の文化政策「エル・システマ」成立に大きな役割を果たしました。この活動は、音楽を通じた社会変革のモデルとして、世界的に注目されています。

小林は、コレギウム・ムジクム東京を主宰し、宮城・中新田バッハホール音楽院の院長も務めるなど、後進の育成にも尽力しています。著書には『ヴァイオリン一挺、世界独り歩き』（1980年）や『ファンタジア わが人生』（2013年）があり、自らの音楽人生を振り返っています。

彼の家族も音楽に携わっており、父親は科学映画制作者の小林米作、実弟には同じくヴァイオリニストで東京都交響楽団の元ソロ・コンサートマスター、桐朋学園大学教授の小林健次がいます。小林武史は、その卓越した音楽性と国際的な視野、教育への情熱をもって、日本の音楽界に多大な貢献を果たした人物として、今後も語り継がれるでしょう。

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