小池和男

小池和男

小池和男（こいけ かずお、1932年7月18日 - 2019年6月18日）は、日本の経済学者であり、特に労働経済学の分野で多大な業績を残しました。彼の研究は、実地での聞き取り調査や国際比較を重視する独自のアプローチが特徴で、日本の労働システムを肯定的に捉える視点を持っていました。

生涯

新潟県出身の小池は、東京大学を卒業後、同大学院で経済学の研究を深め、経済学博士の学位を取得しました。その後、名古屋大学、京都大学、法政大学など、数々の大学で教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。法政大学名誉教授の称号を持ち、日本の経済学界を牽引する存在でした。

研究

小池の研究は、単なる理論に留まらず、実際に企業や労働現場に足を運び、聞き取り調査を行うことを重視していました。また、国際比較の視点も取り入れ、日本の労働システムが持つ特徴や強みを明らかにする研究を多く発表しました。特に、日本の労働者の熟練形成システムや、企業内での人材育成に関する研究は、その後の日本の労働政策にも大きな影響を与えました。

彼の著作は、労働経済学だけでなく、経営学や社会学の分野にも大きな影響を与え、学術的な貢献だけでなく、社会的な議論を喚起する役割も果たしました。著書の中には、『日本の賃金交渉』、『日本の熟練』、『日本産業社会の「神話」』などがあり、これらの著作は、日本の労働経済を理解する上で不可欠な文献となっています。

受賞歴

小池は、その研究業績を高く評価され、数々の賞を受賞しました。主な受賞歴としては、サントリー学芸賞、大平正芳記念賞、紫綬褒章、読売・吉野作造賞、文化功労者などが挙げられます。これらの受賞は、小池の学術的な貢献だけでなく、社会的な影響力の大きさを物語っています。

死去

2019年6月18日、肺炎のため、86歳で逝去されました。小池の死は、日本の経済学界にとって大きな損失であり、その業績は今後も長く語り継がれるでしょう。

主な著書

『日本の賃金交渉 産業別レベルにおける賃金決定機構』(東京大学出版会, 1962)
『賃金 その理論と現状分析』(ダイヤモンド社, 1966)
『職場の労働組合と参加 労使関係の日米比較』(東洋経済新報社, 1977)
『労働者の経営参加 西欧の経験と日本』(日本評論社, 1978)
『日本の熟練 すぐれた人材形成システム』(有斐閣選書, 1981)
『仕事の経済学』(東洋経済新報社, 1991)
『日本企業の人材育成 不確実性に対処するためのノウハウ』(中公新書, 1997)
『聞きとりの作法』(東洋経済新報社, 2000)
『日本産業社会の「神話」 経済自虐史観をただす』(日本経済新聞出版社, 2009)
『高品質日本の起源―発言する職場はこうして生まれた』(日本経済新聞出版社, 2012)
『強い現場の誕生 トヨタ争議が生みだした共働の論理』(日本経済新聞出版社, 2013)

共編著

『賃金交渉の行動科学 賃金波及のしくみ』(東洋経済新報社, 1969)
『人材形成の国際比較 東南アジアと日本』(東洋経済新報社, 1987)
『ホワイトカラーの人材形成 日米英独の比較』(東洋経済新報社, 2002)


小池和男は、日本の労働経済学の発展に大きく貢献しただけでなく、その研究は社会全体に深い影響を与えました。彼の学問的な功績と、その情熱は、今後も多くの人々に感銘を与えるでしょう。

もう一度検索