小泉岩吉

小泉岩吉（こいずみ いわきち）

明治から大正期にかけて活躍した日本の実業家、土木建築請負業者。慶應3年10月19日（1867年11月14日）に生まれ、没年は明らかではない。神奈川県において高額納税者として知られ、横須賀を拠点に事業を展開した。身分は神奈川県の平民であった。

経歴

小泉岩吉は、人夫供給請負業やとび職、農家を営んでいた小泉由兵衛の三男として、神奈川県に生まれた。父・由兵衛は、もとは現在の横浜市金沢区大道の小規模な農家であったが、岩吉の兄にあたる又次郎が5歳の頃に農地を離れ、横須賀へと移住している。

岩吉のキャリアにおいて特筆すべきは、明治26年（1893年）の日清間の緊張が高まり、東アジア情勢が緊迫する中で、特別に選ばれて海軍の御用達を拝命したことである。この時期、彼は横須賀鎮守府が必要とする人夫を供給することで、戦時下の輸送や後方支援において大きな貢献を果たしたと伝えられている。戦後の復興期に入り、経済活動が活発化し事業機会の拡大を見込んだ岩吉は、積極的に土木建築請負業へと乗り出した。自らの組を率い、横須賀海軍建築部や近衛師団経理部、第一師団経理部、陸軍東京経理部といった陸海軍関係の部署をはじめ、宮内省内匠寮、鉄道省、東京市電気局、築城部などの多くの官公庁、さらには様々な企業や工場の建設工事を請け負い、その事業規模を拡大していった。

人物

伝えられるところによれば、岩吉の人柄は「洒脱恬淡」、つまりさっぱりとして物事にこだわらない気質であり、「能く談じ能く動く」、話術に長けており行動力も兼ね備えていたという。高額な納税者として、貴族院の多額納税者議員の互選資格も保持していた。宗教は真言宗を信仰していた。住所は神奈川県横須賀市稲岡町であった。

家族・親族

小泉家は、岩吉の父・由兵衛が農を辞して横須賀に移り住んだことに始まる。岩吉の兄である小泉又次郎（1865年 - 1951年）は、岩吉とは対照的に政治の世界で名を馳せた人物である。若い頃は壮士の一員として活動し、ピストルを懐に暴れ回るなど、三浦地方の政界を駆け巡った。後には横須賀市長、逓信大臣、衆議院副議長といった要職を歴任した。岩吉には弟の金三がおり、彼もまた土木建築業に従事していた。

岩吉には実子がいなかったようで、春山知安の二男であった勇を養子に迎えた。この養子・勇は岩吉の名を継ぎ、二代目・小泉岩吉として小泉組の社長を務めた。彼は昭和9年（1934年）に家督を相続し、名を勇から岩吉へと改名した。

小泉家の系譜は、政治家として成功した兄・又次郎を通じて、現代日本の政治や芸能界へと続いている。又次郎の孫にあたるのが、内閣総理大臣を務めた小泉純一郎氏である。さらに、純一郎氏の子供である小泉孝太郎氏（俳優・タレント）と小泉進次郎氏（衆議院議員）は、岩吉にとっては兄の曽孫にあたる。このように、土木建築請負業者として地域経済に貢献した小泉岩吉は、現代にも繋がる著名な小泉家の基盤を築いた一族の一人と言えるだろう。

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